在日本フィリピン大使館は現在、東京・港区六本木にあるが、数年前までは渋谷区南平台にあった。渋谷の繁華街を見下ろす緑豊かな高級住宅地の一角には今も、地上5階、地下1階建の旧フィリピン大使館の建物がそのまま残っている。ちなみに、大使館が移転した現在も、土地と建物はフィリピン国が所有している。
実はこの旧フィリピン大使館、数年前に売買取引を謳った詐欺話の舞台になって、その筋の注目を集めたのだが、「フィリピン」をめぐっては、それ以外にも、マルコス元大統領の隠し財産、山下奉文将軍が隠匿したという財宝をネタにした詐欺話、カジノ付きホテルの怪しい事業話などが横行している。そして現在、そんな事業話を持ち寄る人々が集う場になっているのが、旧フィリピン大使館なのだという。旧大使館でおこなわれる「会合」に度々参加している都内の実業家が言う。
「羽田と成田をつなぐリニアモーターカーの建設計画とか、ロシアからマレーシア経由で入ってくるLNP(天然ガス)の買い付け話、山下財宝の話もいまだに出てくる」
事業家たちがそれぞれの「事業」について説明する際には、必ずといっていいほど、分厚い資料が添付されるというが、とにかく高級住宅地の一角で、こうした会合が日夜持たれているわけだ。
もちろん、誰がどこでどんな話をしようが一向に構わないが、話し手の中に、大手広告会社の現役社員がいるとなれば、少々話が変わってくる。
「M・Nという人で、羽田と成田を結ぶリニアの話を、1回では持ちきれないような資料を元に熱心に説明していました。なにしろ巨大広告会社のレッキとした社員ですから、聞く方だって真剣になりますよ」(前出・実業家)
しかし、リニア計画という壮大な話を、あろうことか旧フィリピン大使館という曖昧な場所で熱心にして回るというのは、なんとも奇っ怪である。(敬称略)