「有名私大の医学部に裏口入学できる」と持ち掛け、東京・杉並区の50代の男性から仲介料名目で現金3000万円を騙し取ったとして、去る6月28日、3人の男が詐欺の疑いで逮捕された。
逮捕されたのは住所不定の不動産コンサルタント、永江七三男(54)と、石川県白山市の無職、藤島峰(48)、東京・港区の会社員、野沢仁(56)。警視庁の発表によれば、被害者の男性は医者を目指し十数年勉強していたが、医学部に合格できず、裏口入学を模索。知人を通じて知り合った永江らから裏口入学を持ちかけられたという。
報道では「有名私大」の名前は伏せられ、その後、容疑者が起訴されたことを指摘する続報もないが、有名私大というのは「昭和大学」(東京・品川区旗の台、小口勝司理事長)のことで、マスコミはまったく気づいていないが、事件の捜査は現在も水面下で進行中である。警視庁関係者がいう。
「今回の事件はいわゆる『引きネタ』。単純な裏口入学詐欺では終わらない。被害者宅を管轄する高井戸署が単独で手掛けているように見えて、実際は本庁捜査2課が動いている。狙いはズバリ、昭和大学そのものにかかわる疑惑だ」
逮捕された3人は、都合23日間の拘留期限ぎりぎりまで調べられた後、1人をのぞいて7月19日に起訴された。保釈されたのは野沢仁。その野沢は保釈後、関係者に次のように語ったという。
「現理事長の実兄で昨年亡くなった小口智久氏と共謀し、裏口入学だけでなく出入り業者の斡旋をしてこなかったかと厳しく追及された。業者からカネを取っただろう、その一点張りだった」
小口智久。本誌は昨年7月号の《昭和大学「理事長の兄」が不審死——利権の交通整理をする「専門業者」》という記事で同大の経営に関する疑惑を指摘した。
智久は慶応大学を出て日商岩井(現双日)に入社、その後、昭和大学出身の医者である弟の勝司に請われ、大学の経営に参画、弟と二人三脚で大学経営にあたってきた人物である。
医科系大学の経営には、部外者には窺い知れない利権があり、どの大学にもその利権を差配する「専門業者」がいる。昭和大学の場合は「伍鳳商事」という会社がそれにあたり、その社長が智久。そして智久の下で長年、番頭役を務めてきたのが、今回逮捕された野沢だった。(敬称略)