記事(一部抜粋):2012年7月掲載

社会・文化

まるで第2の「AIJ」 カリスマ投資家は風前の灯

【ズームイン】

 東京駅八重洲口、鉄鋼ビルの向かいにあるオフィスビルの7階に、O社という会社がある。社名はイタリア語で「黄金の海」という意味らしいが、この会社が短期間の間にやり散らかしたことを考えると、なかなか言い得て妙である。
 O社のオーナーであるK氏は、ネットワーカーや一部投資家の間で、カリスマ的な存在として知られる人物だという。ちなみにネットワーカーとは、ネットワークビジネス、すなわちマルチ(まがい)商法を生業とする人たちのこと。その一人(X氏とする)が次のように語る。
 「Kさんは、FX(外為証拠金取引)で巨万の富を得たことで一躍有名になった人です。数年前に大阪から東京へ進出。最初は秋葉原のビルを借りていたが、しばらくして今の八重洲に移ってきた。とにかく彼の投資は大胆にして繊細、しかも外れない。そんな人を、カネに目敏い私たちネットワーカーが見逃すはずがない。Kさんを掴まえ、手放さない。投資をさせる。そして儲ける。事は順調に運んでいたのですが……」
 K氏は物腰の柔らかい小太りの紳士で、年齢は50歳前後。一見、銀行の中堅幹部といった雰囲気だ。そのK氏のもとに、ネットワーカーたちのルートを通じてまたたくまに巨額の資金が集まったという。その額なんと400億円。
 「Kさんの運用はFXが中心だったはずですが、具体的なストラテジーは明かされなかった。もっとも、我々としては確かなリターンさえ確保できれば、運用の細かい話は説明されなくても文句はなかった。実際、リターンは間違いなく出ていたのです。ピラミッドのボトム(底辺)の会員(ネットワーカーは、同じ仲間を会員と呼ぶ)ですら、月に数十万円のリターンがあったし、ピラミッドの中間でも百数十万円、トップランクは数百万円になっていた」(X氏)
 八重洲のオフィスには、レンガ(一〇〇万円の帯封)が無造作に転がり、K氏の一日の小遣いは二〇〇万円だったという。昨年後半、K氏はシンガポールに時価三億円の自宅も購入した。
 ところが今年の大型連休を過ぎたのを境に、状況は一変する。(後略)

 

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