記事(一部抜粋):2012年6月掲載

経 済

スキャンダルにかこつけて乗っ取り企む財閥企業

【証券マン・オフレコ座談会】

B 野村証券がきな臭い動きになってきたね。
C 春に一般検査が終わったばかりなのに、4月25日には証券取引等監視委員会(SESC)の「特別検査」が入った。これは異例のこと。おそらく、我々が再三指摘していた公募増資に絡むインサイダー取引に絞った「集中検査」だと思う。
A 3月21日に、SESCは旧中央三井アセット信託銀行の運用担当者による国際石油開発帝石株式のインサイダー取引で、同社に対する課徴金納付命令をおこなうよう金融庁に勧告した。この公募増資に関する事前情報を漏らしたのが野村の社員だったんだ。それも企業部ではなく、営業部の女性。
B 担当部署以外から漏れたとなると、やっかいなことになるね。社内のコンプライアンスがまったくできていないということだから。
C それに「東京経済」という民間信用調査会社が年2回出す要注意企業「300社リスト」にどうやら野村が入ったようだ。それもA〜Jまである評価で最低のJ。
B 東京経済の300社リストは当たることで有名だよね。3月と8月の年2回発表されるらしいけど、前回のリストのうち8社がすでに倒産した。ほかのJ評価には、会社更生法が受理されたエルピーダメモリ、粉飾決算で大問題となったオリンパス、それに創業一族社長がカジノに会社のカネを使い込んだ大王製紙が載っている。野村にはもうリーディング・カンパニーの面影はないけど、今後の行方はどうなるの?
C 最終的に三菱グループ傘下となるんじゃないかな。
A 僕もそう思うね。三菱はUFJを住友信託から横取りしたように、まず金融部門の基盤再整備を狙うはず。その点では証券のガリバーだった野村はターゲットになるはずだよ。
B なぜ、野村なの?
C 野村の子会社ではなかったものの、野村系だった国際証券がどのようにして三菱系になったかを、おさらいしてみるといい。
B たしか2001年に法令違反が次々と発覚して、最終的に金融庁から3日間の業務停止命令を受けたね。
A 証券の大手・準大手クラスで全店業務停止は戦後初。これを受けて国際証券のドンだった松谷嘉隆が辞任に追い込まれた。
C 債券販売で高収益を上げ、株価でも野村を上回っていたことを快く思っていなかった。だから野村が、保有株を三菱に譲り渡したと言われている。
B 国際証券は八千代証券と野村投信が合併した会社だから、債券には強いはずだよね。
A これはあまり言われていないけど、野村は三菱と水面下でつながりが深いのだと思うよ。だから国際証券のスキャンダルを口実に三菱のために国際の保有株を譲渡したと思う。
B 野村と三菱につながりがあるようにはあまり見えないけど?
A 直接的にはね。ところが間接的には色々と見えてくる。まず、1991年6月の「損失補填事件」と97年3月の「総会屋への利益供与事件」の責任をとり、当時の社長が立て続けに辞任に追い込まれた。その実力者不在の中で社長になったのが、営業現場を知らない氏家純一。これが野村の凋落の始まり。
C そういえば、氏家純一は日本テレビの会長で読売グループの相談役だった氏家斉一郎(昨年死去)の甥っ子だったよね。日テレは歴史的にも三菱系と認識されていて、社屋の増改築などの際には三菱電機が電機関係を受け持つと言われている。
B スキャンダルが続いた後に、三菱系と思われる企業の会社の甥っ子が野村の社長になったというわけか。
A そのスキャンダルの総会屋への利益供与事件も、細かく調べると面白いことがわかってくるんだ。
B 大物総会屋、小池隆一の?
A 小池隆一の師匠は木島力也で、その師匠は三菱グループの与党総会屋だった上森子鉄だよ。
B ということは?
A 小池も三菱の与党総会屋だった可能性が高いということだね。総会屋のことが書かれている『担当者必携』にはこう書かれているよ。《泰然自若としているが、ひとつ事を起こすと大きなことをやる人で、その去就は常に企業の注目のマトである。信義に厚く、知友・交友関係も多いことから、特定企業の信頼は絶大なものがある》
C その特定企業というのが三菱という可能性は十分ありえる。野村で小池を担当していた役員が常務(当時)の武士二郎だったけど、その武士と小池は同じ三菱地所の高級分譲マンションに住んでいたことが当時話題になった。それも購入日が全く同じ。こんなことは常識では有り得ない。
A 当時、「小池がそのカネを払った形跡がない」と報道されていたけど、後追い報道はなかったね。実は、その武士の部下だったのがAIJ投資顧問の取締役だった松木新平なんだ。その松木をAIJに呼んだのが同じ野村OBで、AIJ社長の浅川和彦。この浅川が、オリンパスの損失飛ばしの実行部隊だった中川昭夫容疑者と野村退社後、二人三脚で仕事をしていた時期があったそうだよ。(後略)

 

※バックナンバーは1冊1,100円(税別)にてご注文承ります。 本サイトの他、オンライン書店Fujisan.co.jpからもご注文いただけます。
記事検索

【記事一覧へ】