(前略)
C 「復興増減税」を年間の捻出額で表すと、興味深いことがわかってくる。所得税と住民税などの増税の合計が3770億円なのに対して、法人税の減税が8000億円と増税効果が吹っ飛んでしまっているんだ。これでは「大震災を口実に、財界に恩を売った」と言われても仕方がない。東北3県の被災者は、震災と福島第1原発の放射能タレ流しに加え、復興増税、消費税増税で、まさにトリプルパンチだよ。
B でも消費税増税は株式市場にとってはプラスじゃないの? 過去の消費税導入と増税後の株価のデータはどうなっているの?
C 消費税導入が1989年4月1日で、4月3日の日経平均株価の寄り値は3万2863円。その年の大納会の終値は3万8916円を記録したよ。
B 株価は2割近くも上昇してるけど?
C 大納会が日経平均株価の史上最高値で、翌90年は年初から急落して、約10カ月で平均株価は半分になってしまったんだ。
A それと89年の消費税導入後の平均株価の上昇は、トリックだったことが判明しているよ。
B トリックって?
A トリックには、日経225先物が絡んでいたんだ。日経225先物の取引開始は88年9月3日で、日経225オプションの取引開始は89年6月12日。どうやら外資系証券会社は日経平均の組み入れ銘柄に欠陥があることがわかったうえで、30銘柄ある日経平均採用の超品薄銘柄を1年かけて仕込んだ。だから、ほとんどの銘柄は上がらなかったのに、平均株価だけは上昇した。これが、トリックだよ。
C たしかに、89年は株では全然儲からなかったという声が少なくない。89年の平均株価の値動きをみると、日経225オプションの取引が開始された6月12日あたりから急上昇しているね。
A 外資系証券、特にソロモン・ブラザーズ証券が中心なんだけど、1年かけて超品薄株を買い上げながら平均株価を吊り上げる。その一方で、11月から先物の売りに回ったと言われている。90年1月上旬から大量のプット買い(平均株価が下がると儲かる)を仕掛けた後、今度は1年間コツコツと溜めこんだ225採用の超品薄株を投げ売りしたんだ。
B それをやると超品薄株が急落するから、先物も急落するよね。
C 当時、証券営業をやっていて、ヒドイ目に遭った。お客の中で超品薄株だったラサ工業株を信用取引で買えるだけ買っている人がいたんだ。それが90年1月から2月に急落して、値が付かない日が何日か続いた。
B それじゃ、すぐに追証が発生したね?
C 担保株も225五採用の超品薄だったから、あっという間に追証になり、その金額は億になったよ。Aさんの言うように、上げっぷりがよかったのは超品薄株だけだったんだ。だから株のセミプロは、必然的に品薄株を狙わざるを得なかったんだと思う。
A 追証も億を超えると入らないんじゃないの?
C 結局、「何時までに入れる」と本人は言うんだけど、入らなくて、仕舞いには連絡がつかなくなった。
B 内容証明書を送って、最後は強制決済ということになるね。
C 通常はね。だけど、当時所属していた証券会社の担当役員に、「全て君の責任でやってくれ」と言われて逃げられていたので、そんな悠長なことは言ってられなかったんだ。結局、隠れていたところを捜し当てて、全て売却するのを承諾してもらった。
A 90年の大暴落では、東京マーケットから300兆円が消失したと言われているけど、一方で空前の利益を出したのがソロモンを筆頭とする外資系証券だった。だから消費税が導入された89年は、株式の絶好の売り時だったってことだよ。
C 225先物を導入した時の首相だった竹下登も、側近に「先物を導入したのは失敗だった。もっと慎重に調べるべきだった」って言っていたらしい。
B 97年はどうだったの?
C 消費税が5%に引き上げられたのが97年4月1日からで、平均株価の寄り付きは1万7935円。そして、その年の大納会の終値は1万5259円だった。
B 97年は海外要因が引っ張ったんじゃないの? 韓国を筆頭とするアジア通貨危機が勃発したし。
A ただ、当時の経済指標をみると、経常収支が大きく減少していない。したがって、海外要因が原因とは考えにくい。(後略)