皇族・華族のための教育機関として開校した由緒正しき「学習院大学」。その象徴として50年近くキャンパス内に屹立していた通称「ピラ校」こと、ピラミッド校舎は2008年、老朽化、アスベストの使用などを理由に多くの人に惜しまれながら解体された。ピラ校は建築家の前田國男の設計によるが、キャンパス内には、その前田の手による建築物が他にもある。
そのひとつが南二号館で、こちらはいまだ健在。その1階に、キャンパス内の空調を一手に引き受けているボイラー室があり、一教室ほどもあるスペースの中に、大型ボイラーが鎮座している。
そのボイラー室に夜な夜な人が集まっては「宴会」が開かれていることを、学内で知る人はそれほど多くない。
学校法人学習院の設備部と縁の深い設備業者が次のようにいう。
「名づけて学習院名物『ボイラー酒場』。ここで設備関係の業者が酒を持ちより、車座になって酒を酌み交わしているのです。ボイラー室だからもちろん寒くない。酒が入ると汗ばむくらいに暖かくなる。この宴会を仕切っているのがI設備という業者です」
なんとも殺風景な宴会だが、いったい業者は何を目的に集まっているのか。
「端的にいうと、学習院の仕事がほしいからです。そのために我々業者は、ボスであるI設備の社長にゴマをする。学習院出入りの業者になれば、それだけで世間の目が違ってくるから、みな必死です。なにしろ学習院といえば、いまでは一般の学生ばかりですが、かつては皇族・華族専門の教育機関。いわば皇室御用達の業者だと胸を張れるというわけです」(同)
集まっているのは大手ではなく、ほとんどが中小や零細業者。不況で工事自体が減るなか、その努力は涙ぐましいものがある。
そのボイラー酒場には時折、学習院の設備部の担当者が来ることもあるという。
「接待というには、場所が場所ですが。いずれにしても、この酒場に出入りすることができないと、学習院の設備関係の仕事が取れないということなのです」
事実であれば、このボイラー酒場、談合組織そのものではないか。(後略)