記事(一部抜粋):2012年4月掲載

経 済

主導権争いでガタガタの大王製紙

創業家、現経営陣らの不毛な戦い

 大王製紙の現経営陣と創業家とのあいだで経営の主導権を巡る熾烈なバトルが展開されている。きっかけは創業家三代、井川意高元会長の巨額背任・横領事件。
(中略)
 もっと奇怪なのは意高被告の背任事件を「井川家の問題」として切り捨てようとしていることである。社内に設置された第三者委員会の「調査特別委員会」資料には、聞き取り調査の意見として「会社は創業家のもの」「創業家には逆らえない風土があった」などのくだりが随所に見られる。創業家かつ大株主で、関係会社にも多数の「井川姓」が在籍している会社なので、社員が井川家に楯突くことなど現実にはできなかっただろう。それは分かるが、個人が引き起こした事件の責任を井川家の全員に押し付けるのも無理筋だろう。
 意高被告の実父で社長、会長、最高顧問、顧問を歴任した井川高雄氏は、昨年の3月に(被告の借り入れの)事実関係を知りながら取締役会に報告せず、その結果、損害を拡大させたとして断罪され、顧問を解職されている。単純にいえば、息子の不祥事を隠したということであろうか。これに対して高雄氏は「すでに何年も前に取締役を辞任しており、取締役会などへの報告義務はない」と主張しているが、これも形式的すぎる。実質的な最高権力者なのだから、言いたいことがあれば、社長でも誰でも呼びつけて詰問できたはずだ。それをしなかったのは、やはり息子可愛さととられても仕方ない。
 もっとも単純な疑問として、「高雄氏は誰から聞いたのか」ということがある。一部報道では当時の取締役の名前が出ている。それが本当なら、取締役会はすでに昨年3月に事実関係を掌握していたことになり、「知らなかった」ではすまされない。「知っていた事実」を頬かむりして、責任を高雄氏、ひいては井川家全体に押し付けようとしているのではないか。ちなみに、この件で懲罰の対象となったのは先の取締役(経理担当)と、被告の実弟の井川高博取締役(辞任勧告を拒否して担当をすべて外された)、それに顧問をクビになった高雄氏である。
(中略)
 そんな中興の祖を、息子の不祥事で解任し、会社への出入り禁止を通告したのである。しかし、高雄氏は法律を犯したわけではない。その高雄氏は今、反撃に打って出ようとしている。大王にとってなくてはならない主要な関係会社で臨時取締役会を開き、執行部から大王出向者を排除、自身に近い人物と入れ替えているのである。(後略)

 

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