記事(一部抜粋):2012年2月掲載

経 済

消費増税強行の裏にある400兆円の除染コスト

【証券マン・オフレコ座談会】

(前略)
A それはそうと、福島第1原発関連の除染費用にいくらかかるか知っている?
B 今年度の3次補正予算で2459億円を計上し、来年度の予算案でも4513億円を計上したから、合計で1兆数千億円にはなるんじゃないかな。
C 政府は年間追加被ばく線量が1ミリシーベルト以上、5ミリシーベルト未満の地域の除染を国の責任でおこなうと言っている。そうなると福島、栃木、群馬の3県をスッポリ覆う面積になってしまう。1兆円どころか100兆円は下らないと言われているらしいよ。
A ひた隠しにしているけど、政府試算では400兆円と出たようだね。強引な消費増税の背景にはこれがあるらしい。それも除染が計画通りにいった場合の試算。しかし400兆円では、もう消費税でどうのこうのというレベルの話じゃない。前から言っているように、チェルノブイリのように石棺でも何でもやって、放射能物質の放出を今すぐ止めるべき。それをやらなければ、日本が終わるというレベルの話だ。
B でも一向にそんな話は出てこない。「社会保障と税の一体改革」とか、「復興原資として」といった増税の話ばかり。
C 要はこの金額を見ると、除染や廃炉事業が近年にはない巨大なプロジェクト(公共事業)になるわけで、その利権に与するためには声を大にして言えないのかもしれないよ。
A それにしても、この原発事故は解せないことばかり。その一1つは原子炉の保険更新の件。
B 福島第1原発は2010年8月から「原子炉」保険証書の更新をしていなかったんだよね。
C それで東電は、保険金と同額の1200億円を国に供託した。
A 保険会社は、福島第1原発の米ゼネラル・エレクトリック(GE)製の原子炉は老朽化していて危険性が高いとして、保険料を引き上げた。それに対して東電は、保険料が高過ぎるとして保険証書を更新せず、放置していた。
B これで助かったのは保険会社。1200億円で保険更新していたら、会社存亡の危機だったからね。
A 何のことはない。結果は損害賠償を負担するのが保険会社から国民にスリ代わっただけ。話がウマすぎる。2つ目は放射性物質による被ばく除染剤(薬)の認可の件だ。
B 今度は除染は除染でも薬の話?
C プルトニウムなどの放射性物質を吸い込んだ患者に使う薬剤が、なぜか事故の直前に厚生労働省の要請で開発を促されていたという話でしょ。事故後一時、話題になったけど、すぐにたち消えとなった。たしか、開発を要請されたのは日本メジフィジックスだったはず。
A その日本メジフィジックスを調べるととても興味深いことがわかる。GEグループのGEヘルスケアと住友化学の折半出資の会社なんだ。
B 日本の原子炉開発者からも危険視されていた「マーク1型」原子炉を売り付けたGEの? よりによって、いつも後手後手に回る官僚が、ずいぶん手回しがいいものだ。
C 住友化学といえば、原発事故後、「日本の原発が千年に一度の大津波に耐えているのは素晴らしいこと」とコメントした経団連会長の米倉弘昌が会長を務めている。
B それで、その製薬会社の薬剤は認可されたの?
A 国が開発要請したのだから当然。「セシウム137」を体外に排出させる経口剤が2010年10月27日、ウランやプルトニウムなどを体外に排出させる注射薬2点が2011年7月1日にそれぞれ認可されている。
C GEは日立と組んで廃炉処理(廃炉ビジネス)にも関わるし、これじゃまるっきりマッチポンプじゃないか。(後略)

 

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