記事(一部抜粋):2012年2月掲載

政 治

シロアリ退治なき消費増税、財務省と厚労省の焼け太り

【霞が関コンフィデンシャル】

 すばらしい演説がある。長くなるが紹介しよう。
《マニフェスト、これはイギリスで始まりました。ルールがあるんです。書いてあることは命懸けで実行する。書いてないことはやらない。それがルールです。
(中略)
 消費税1%分は、2兆5000億円です。12兆5000億円ということは、消費税5%ということです。消費税5%分のみなさんの税金に、天下り法人がぶら下がってるんです。シロアリがたかってるんです。
 それなのに、シロアリ退治しないで、今度は消費税引き上げるんですか? 消費税の税収が20兆円になるなら、またシロアリがたかるかもしれません。
 ○○さんが4年間消費税を引き上げないといったのは、そこなんです。
 シロアリを退治して、天下り法人をなくして、天下りをなくす。そこから始めなければ、消費税を引き上げる話はおかしいんです。
 徹底して税金の無駄遣いをなくしていく。それが△△党の考え方であります》
 ○○に小泉、△△に自民を入れると、野田政権への強烈な攻撃になるが、実際には○○は鳩山、△△は民主で、演説した人は、消費税増税に積極的な野田佳彦サンである。
 ここまでくると、パロディを通り越してブラックユーモアだ。
(中略)
 もっとも、民主党執行部は自民党が消費税増税に反対できないと踏んでいる。自民党は2010年の参院選で消費税率を10%に引き上げると公約した。だから、「消費税増税には賛成だが、民主党が提起する増税協議には応じられない」という自民党のスタンスは国民にわかりにくい。消費税増税に賛成する『日本経済新聞』も1月12日付の社説で、09年衆院選で民主党が消費税を上げないといったことを理由として自民党が協議に応じないのは理解に苦しむと批判している。
 こうしたことから野田政権は、消費税選挙となっても大敗しないと読んでおり、衆院解散も辞さない構えだ。現に野田氏はそう発言していると伝えられている。3月以降いつ解散があっても不思議でない。
 民主党内の反消費税増税グループは選挙基盤が弱い人が多い。彼らが選挙で落選しても、民主党が大敗さえしなければ、党内基盤は逆に強まりむしろ好都合と、現執行部は考えているフシがある。
 野田政権を裏で操る財務省にとっても、今のように民主党と自民党の両方が消費税増税を支持している状況は、惑星直列のような滅多にない好機。このタイミングでの選挙は、「負けのない勝負」といえる。
 陰の総理である勝栄二郎次官が率いる財務省は、着々と仕事をこなしている。あまり大きな記事にはならなかったが、政府は1月6日の閣議で、内閣府の浜野潤事務次官が退任し、後任に財務省出身の松元崇官房長を充てる人事を決めた。簡単な解説として、次のように書かれている。
《松元氏は財務省出身で、主計局ポストを中心に務めた後、内閣府政策統括官となった。財務省出身者が2010年の省庁再編で発足した内閣府の事務次官となるのは初めて》
 内閣府はいろんなことをする役所だ。庁舎も点在している。総務課、人事課、会計課など大臣官房と行政刷新会議事務局などが入っている内閣府庁舎は総理官邸の前、経済財政運営など旧経済企画庁や旧沖縄開発庁などが入っている中央合同庁舎第4号館は財務省の後ろ、ほかにも構造改革特区担当室などが入っている永田町合同庁舎など、いくつもの中央合同庁舎に関係部署が分散して入っている。
 松元氏の歩んできた経歴を見ると、内閣府では旧経済企画庁のマクロ経済政策がほとんど。内閣府に来る前は財務省の主計局次長だった。主計局次長は予算編成の責任者。かつての旧大蔵省時代、相手省庁の事務次官との「次官折衝」では主計局次長が対応した。(後略)

 

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