大王製紙の前会長が、ギャンブルに溺れて100億円を超えるカネをグループ企業から引き出したという前代未聞のスキャンダル。地位もカネもある男が誘惑の魔の手にからみとられて転落するプロセスは、まるで映画のようだが、その大王製紙を彷彿させる醜聞が持ち上がっている。醜聞の主は、不動産関連の上場企業R社の創業社長T氏。R社株の過半を保有するダントツの筆頭株主である。
やり手の経営者として業界では評判のT氏だが、その表の顔(オフィシャル)と、裏の顔(プライベート)には、天と地ほどの差がある。そう証言するのは、元風俗業者のX氏だ。
「T社長とは知り合って2年以上。きっかけは女性を紹介したことです。それが私の仕事ですから」
以来、X氏はT社長に何人もの女性を紹介してきたという。
「たいていのお客さんは偽名を名乗りますが、T社長は最初から本名を教えてくれました。オープンというかなんというか」
上場企業の社長として脇が甘いというしかない。T社長は「買春」という意識はなく、単に自由恋愛を楽しんでいるという認識だったのかもしれないが、X氏と知り合って1年が過ぎたころから、「要求」をエスカレートさせていったという。ちなみにT社長はまだ40代半ばの働き盛り。気力も体力も十分だった。
「最初は合法ドラッグでした。やがて、それでは物足りなくなったらしく、私もその要求に極力こたえるようにしたのです」
X氏はそういうが、それが事実だとすると、T社長はX氏の罠に嵌まったようにもみえる。
今年の初め、T社長はついに、取り返しのつかないトラブルに巻き込まれてしまう。X氏がいう。
「クスリと女性の両方を要求してきました。こんな世界でも一応、御法度があって、クスリと女性を一緒に運ばないようにしています。トラブルが起きやすいからです」
ところがその日は、T社長の要求が執拗だったという。X氏は結局、T社長の要求を入れ、女性とクスリを「運んだ」という。そこでとんだトラブルが発生する。
「クスリで舞い上がったT社長は、道具を使って女性を傷つけてしまったのです。しかも女性は未成年ときていた。もしこのことが明るみになったら、T社長はもちろん、供給元の私を含めたすべての関係者が身の破滅です」
トラブルは闇に葬り去らねばならない。そのためには傷ついた女性を懐柔するしかない。しかし女性の要求は1億円という途方もない金額だったという。
「1億円を要求したのは、正確にいえば女性を管理している人物です。要は恐喝ですが、T社長としては警察に駆け込むわけにはいかない。女性側はそこを突いた。それで私が1億円をT社長から受け取り、女性側に渡すことになったのです」
大震災から2週間しか経っていない3月28日、X氏は1億円をT社長から受け取るために、六本木のリッツ・カールトンホテルに出向いた。指定されたホテルの部屋に入ると、T社長ともう一人、見知らぬ顔があったという。
「私が部屋に入ると、T社長は『後はよろしく』といってさっさと出ていきました。残った男はNと名乗り、『山口組Y組』と書かれた名刺を切りました」(後略)