(前略)
C リチャード・アーミテージにジョセフ・ナイ、それにマイケル・グリーンなどの「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれる人達が相次いで訪日していたらしいね。
A それに世界最大の財閥、米ロックフェラー財団会長のディビッド・ロックフェラー・ジュニアに、そのロックフェラー家の番頭と目されるヘンリー・キッシンジャー元米国務長官までもがやってきた。
B 野田がTPPへの参加表明後、すぐに会ったのがキッシンジャーだった。
A 野田がTPPをめぐる閣僚懇談会をやっている夕方6時に官邸に押し掛けてきて、官邸内をウロウロしてた。これは「早くTPP参加表明を決めろ」との催促。
C ロックフェラー家の番頭に官邸をウロつかれたんじゃ、野田も参加表明せざるを得ないか。
A そういうこと。だから、「日本が参加したら米国が困る」のではなく、「参加しないと米国が困る」ということ。オバマもはっきりと「TPPは米国人の雇用を増やすための戦略」と言い切っている。
B 経団連会長の米倉弘昌だってTPP推進派なんだから、日本企業にもメリットがあるのでは?
C 米倉は福島原発事故後、「日本の原発が千年に一度の大津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」と宣った御仁。あれだけヒドイ目に遭っている福島県民がいるのに「素晴らしい」はないだろう。
B 政治家の発言には、過剰反応するくせに、マスコミは経済団体には腰が引けている。クライアントの代表だから仕方ないのかも。
A 経団連を産業界の代表と考えることがそもそもの間違い。経団連の年間維持費は約60億円。そのほとんどを会長企業が出す。だから、会長企業はそれを早期に回収しようと利益誘導に走る。いわば、経団連会長のコメントはコマーシャルみたいなもの。
B 米倉は住友化学の会長だよね。
A そう。住友グループの代弁者。そう見た方がいい。
C 住友グループは2006年に約4200億円で米原子力プラント大手の米ウエスチングハウス(WH)を買収した東芝を間接的に抱えている。東芝はさらに今年9月、米エンジニアリング大手ショー・グループからWH株20%を取得。これでWHの出資比率は87%になった。
B 買収資金には三井住友銀行も関係しているだろうから住友グループは原発を推進せざるを得ない。
A 米WHは元々はロックフェラー系と目されていた。これからも原発建設が世界的ビジネスになるのなら、WHを手離すはずがない。原発を稼働させればさせるほど、核兵器原料のプルトニウムが生産される。日本が米国に次ぐプルトニウムの保有国となったため、安全保障上、米国は日本にこれ以上の生産を許さない。
B 10年くらい前の話だけど、小沢一郎が中国共産党幹部に向かって、「日本の原発はプルトニウムが余っているから、核弾頭を3000から4000発持てる。あまり調子に乗らない方がいい」と言ったというのを聞いたことがある。
C 自由党党首の時ね。その後、中国の要人だけでなく、米国の要人もあわてて日本にやってきたと言われている。いくら牽制といっても、こんなことを言ってしまうから米国も警戒するのだろう。
A 経団連の話に戻るけど、米倉がTPP加盟にこだわるのは、農薬が売れるようになるからだと思う。日本は米国に比べて農薬などの安全基準が厳しい。ところが加盟となれば、一番緩い米国基準に統一される。
B TPPへの加盟で日本の農業は、大規模化するか、高付加価値にするかの選択を迫られる。大規模化農業なら大量の農薬が必要ということだね。
A 住友化学は米農薬大手のモンサント社と昨年10月、長期契約を結んだ。これはTPP加盟を見据えたもので、遺伝子組み換え種子とそれに合った農薬、除草剤がセットで提供される。
B モンサントって、ベトナム戦争で問題となった枯葉剤の製造メーカーじゃなかった?
C 枯葉剤だけじゃなくて、第2次世界大戦の時の原爆の開発にも関わっていた企業のはず。
A マンハッタン計画。当時社長だったトーマスが計画に関わって、プルトニウムを抽出する化学工場の責任者だったと言われている。(後略)