記事(一部抜粋):2011年12月掲載

経 済

メガバンクが虎視眈々 大和は「唯一最大の花嫁」

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(前略)
 野村の海外部門の誤算は、欧州だけでなく米国でも生じている。米国の準公的住宅金融会社ファニーメイやフレディマックを管理する米連邦住宅金融局(FHFA)が11月2日、野村を含む大手金融機関17社を提訴したのだ。これらの金融機関は住宅バブル期に組成・販売した住宅ローン担保証券(MBS)の質を不当に評価したとして、1960億ドル(約15兆円)の返還を求められている。このうち野村が組成・販売したMBSは20億ドル。あまりに巨額な返還請求に、野村の株価は急落した。
 「08年に買収したリーマン・ブラザーズの欧州部門が、ギリシャ危機の影響をもろに受け低迷するなど、野村は完全にツキに見放されている」と大手証券幹部は気の毒がる。
 「格下の大和に株価を逆転されたときには、さすがに野村の関係者も落胆の色を隠せなかった」(同)
 野村の苦境は業績だけにとどまらない。話題のオリンパス事件では野村の名前が頻繁に登場する。
 オリンパスが買収し、巨額な報酬を支払ったとして問題となっているM&Aを仲介した重要人物として名前が取り沙汰されているのは、野村証券の新宿支店長を務めた横尾宣政氏。同氏はオリンパス事件の「パンドラの箱」とみられている。
 だが、渡部社長にとって最大の心労の種は、またも浮上した「インサイダー取引」疑惑だろう。問題視されているのは、7〜9月に発表された東京電力、国際石油開発帝石の2社の公募増資。野村は、これら増資の主幹事もしくは共同主幹事に就いているが、2社の株価は、増資発表直前から外資系のヘッジファンドが大量の売りを浴びせたため急落。増資情報が事前に外部に流れていた可能性が高いのだが、その出所先として疑惑の目が注がれているのが野村だ。
 野村は08年にも中国籍の社員がインサイダー取引で逮捕され、金融庁から業務改善命令を受けたという前科がある。証券取引等監視委員会と東証は、今回の増資情報漏れに関して調査に入っている模様で、仮に野村が処分を受ければ、まさしく弱り目に崇り目だ。
 こうした野村の苦境を横目で睨み、買収の好機とほくそ笑んでいるのがメガバンクだ。「三菱UFJフィナンシャル・グループの永易克典社長が、社内に野村買収の検討を指示した」(メガバンク幹部)との情報が駆け巡るなど、野村の周辺は俄然きな臭くなってきた。
 一方、大和証券グループ本社の窮状は、野村以上と言っていい。米大手格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは11月9日、大和グループの持株会社である大和証券グループ本社をBaa3(ネガティブ)、大和証券をBaa2(同)、大和証券キャピタル・マーケッツをBaa2(同)に格下げした。
 「もう一段格下げされれば、ジャンク(投機的格付け)に落ちてしまう。見通しはネガティブとなっていることから、その可能性は濃厚だ。そうなると証券会社としてリスク投資を制限される可能性がある。最悪の場合、海外に投資している資産の巻き戻しをしなければならない。まさに首の皮一枚の状態。どこか信用力の高いところと一緒になるしか大和には道が残されていない」(大手証券幹部)
(中略)
 「証券界に残された唯一、最大の花嫁」
 これはメガバンクで囁かれている大和の俗称だ。その大和に最も強烈にアタックしているのは、大和と同時期にトップ交代をおこない、グループ内の証券子会社の統合を予定しているみずほフィナンシャルグループである。大和関係者は「春先に提携の打診があった」と明かす。
 みずほ証券とみずほインベスターズ証券を合併するみずほは、ここで大和をパートナーに迎えることで、一挙に野村を抜いてわが国最大の証券会社に飛躍するというシナリオを描いている。それは旧日本興業銀行が念願とする「最大・最強の投資銀行」の実現にほかならない。
 だが、三井住友、三菱UFJも大和との連携を模索していることに変りはない。三井住友は、先の合弁解消の後遺症はあるものの、國部毅頭取が「大和が3年を経てなお1人でいるのであれば、また一緒になりたい」と周囲に漏らすなど、いまも大和の取り込みを諦めてはいない。
 これはほとんど知られていないことだが、両社は合弁解消後、ともに訴訟の準備を進めるなど、一時、修復不可能なほど関係を悪化させた。それだけに相応の冷却期間が必要となるが、國部氏と日比野氏はかつてのMOF担時代から親しい関係にある。元の鞘に収まる可能性は残されている。
 三菱UFJも、大和との提携には強い関心を持っている。現在はモルガン・スタンレー証券との合弁事業に専念する姿勢を見せているが、三菱UFJにとっても大和が「唯一、最大の花嫁」であることに変わりはない。モルガン・スタンレーとの連携が思うように進んでいないうえに、個別のディールで競合するなど、合弁の成果に疑問符がつく場面もみられるだけに、三菱UFJが証券戦略の練り直しを図り、一挙に大和との距離を縮める可能性はある。(後略)

 

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