記事(一部抜粋):2011年11月掲載

経 済

オバマが日本に仕掛ける「11.11テロ」

【証券マン・オフレコ座談会】

(前略)
C ヘッジファンドと格付け会社の連携、いわゆる「究極のインサイダー」にメスを入れないとだめだと思う。韓国のケースは大手格付け会社のムーディーズが1997年7月に、韓国の格付けをA1からA3まで落とし、さらに11月にもBaa2まで落としたことがキッカケだった。その前にウォンを空売りしていたのがヘッジファンド。結局、IMFは11月末になって多額の金融支援を実施したけど、そのせいで現代グループは財閥解体に追い込まれた。
B 通貨の乱高下でボロ儲けした者がいると?
A 当局は一般人の株式のインサイダー取引については厳格なのに、通貨取引はインサイダー取引を想定していない。国家レベルの資金の動きがあり、東京証券取引所の150倍の売買代金となるからね。
B 「大きすぎて、摘発できない」ってことか。
C 売買代金の額が額なだけに、ちょっとしたインサイダー情報だけでは為替が動くはずがないという考えと、国家と密接な関係にある特定のヘッジファンドの動きによって為替が大きく動くので、それを摘発するのは無理という判断。
A それなら「増資インサイダー」を摘発してみろと言いたい。巨額増資を実施した国際石油開発帝石に東京電力。発表直前から売買高が増えるなど、明らかに増資情報が漏れていた。
B 国際石油開発も東電も主幹事証券は野村だよね。両銘柄とも、増資発表後、株価が急落しているから、事前に空売りしておけば、濡れ手に粟だったはず。野村は自社株でも巨額増資で2日間ストップ安にしたという「前科」がある。
C 銀行は間接金融の担い手であるのに対して、証券会社は直接金融の担い手。要は、株主作りが仕事なのに、その株主を犠牲にするような増資は証券不信を招くだけだ。
A 不思議なのは、巨額増資を発表した国際石油開発にすぐ逆日歩が付いたこと。
B 一般投資家の空売りが増えれば、株不足となって逆日歩が付くのは当然じゃないの?
A ところが国際石油開発も東電も大型株で、機関投資家の持ち株も多い。だから通常は貸し株がたくさんあって、ちょっとやそっとじゃ、逆日歩が付くことはない。ところが今回の場合、東電はそれほどでもないけど、国際石油開発は、信用取引の空売りが多くもないのに数円の逆日歩がすぐ付いた。
B 機関投資家が貸し株をしなかったってこと?
C それは考えにくい。ただ保有しているだけより、貸し株すれば貸し日歩がもらえるから、貸し株に回すはず。
B ということは、日証金などの証券金融会社に回す株式が不足したってことになるね。
A 外資系のヘッジファンドが、増資発表前に借り株を利用して大量に売却したからだと思う。
B なぜ、増資情報をヘッジファンドが知り得たのだろうか?
C 半ば恒例になっているんだけど、主幹事証券は増資前に、海外の投資家に「もし増資をした場合、どのくらい引き受けてもらえるか」と聞き取ることが多い。それによって増資額を決めていく。おそらく、そこから漏れたのだと思う。
(中略)
B ところで米韓が自由貿易協定(FTA)の早期発効に向けて動き始めたね。環太平洋連携協定(TPP)が遅々として進まない日本は、船に乗り遅れたのでは?
C そういうことを言う評論家が多いのは事実。たとえば勝間和代は「農業保護を理由にTPPに消極的だと、日本経済のけん引役の自動車などの輸出産業が競争上不利になる。それが結果的に国内雇用の悪化につながる」とか「日本は、コメをはじめとした様々な農産物に高い輸入関税を課して、国内農業の生産・雇用を保護している」とか言っている。
B 政調会長の前原誠司も「国内総生産(GDP)に対する農業の割合は1.5%に過ぎない。その1.5%のために残り98.5%を犠牲にしていいのか?」と言ってたよね。
A ご両人とも真剣にTPPを勉強していない人だと思う。確かに農業はGDPの1.5%だけど、乗用車はそれより低い1.23%。耐久消費材(家電)だって、1.62%に過ぎない。それにFTAとTPPは、まったく別物。FTAは個別で除外された後猶予期間があるのに対して、TPPは「例外なき関税撤廃」が原則。一度加盟すると、例外は許されない。(後略)

 

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