(前略)
以上のことを改めてまとめると、次のようになる。
①円ドルレートは、円とドルのマネタリーベースの比によって九割決まる。
②円高はメリット、デメリットがあるが、全体としてみれば日本経済にマイナスである。
③円高になると株価は下がる。
このように為替などの決まり方を理解していると、財務省に介入を求めることの無意味さを痛感させられる。もっというと、財務省に為替介入の権限があること自体おかしいことがわかる。
財務省が為替権限を手放さないのは、100兆円にのぼる外為資金運用にかかわる利権だからである。
外為資金は、為替の変動の乱高下を防止する目的で国債(為券)を発行し、外貨債を購入するというものだ。しかし、マネタリー・アプローチからすると、ほとんど意味はない。外為資金が100兆円もあるのは、この間に巨額の介入をしてきたからだ。しかし、それでも円安にはならない。逆に円高によって含み損が30兆円程度発生している模様だが、それはすべて国民負担である。
法律上の権限が財務省にあって、それを財務省が絶対に手放さないのをいいことに、無為無策を通しているのが日銀だ。円高は財務省と日銀の共犯であることもわかる。
本来であれば、財務省の外為介入は事業仕分けで廃止すべきものである。それを日銀にやらせるほうが、責任の所在が国民にも明確になっていい。しかし、財務省に甘い民主党政権に、そんなことは絶対にできない。
こういうと、「円を刷って、円安にするのは『近隣窮乏化政策』だ」などと批判される。
しかし、自国通貨を安くする政策はこれまでいろいろな国で採用されている。理由は自国にとってそのほうがプラスが多いからだ。
近隣窮乏化というのは、他国がそれをやったときに非難する言葉で、自国向けにはいわない。
自国通貨を過度に安くすると酷いインフレになる。しかしマイルドインフレになる程度の自国通貨安は、結局隣国の輸出にもプラスで、自国も隣国も「WIN‐WIN」の関係になることが、国際経済学で知られている。
日本のように、円を供給過小にして円高にしているのは自国窮乏化である。なんと愚かな政策なのか。(後略)