記事(一部抜粋):2011年8月掲載

経 済

【企業研究】黒田電気

続く創業家との確執

 やや旧聞に属するが、2007年6月、東証1部上場の電気部品商社「黒田電気」が、奇妙なニュースリリースを発表した。「代表執行役に関するお知らせ」と題したその文書は、同社社長(当時)の黒田善孝が辞任する旨を伝えるとともに、その理由をこう記していた。
《当社は社長黒田善孝が反社会的勢力の関係者と面会したとの情報を入手したため、説明を求めたところ、同人はその事実を認めた上で、面会はあくまで個人的なものであり会社の業務とは一切関係ないが、上場企業の代表として面会すべきではなかったので、取締役を辞任して責任をとりたい旨の申し出がありました。そこで、本日開催の当社取締役会において、本日付けで辞任を承認しました》
 上場会社の社長が「反社会的勢力の関係者」と面会したことを理由に辞任する——。「富士通」の社長だった野副州旦が一昨年、「反社会的勢力との関係が疑われる」との理由で解任された騒動を彷佛させるスキャンダルだ。
 しかし07年当時、電機業界やマスコミ、証券業界では「黒田電気でいったい何が起こっているのか」と話題にはなったものの、黒田電気からリリース以上の説明はなく、辞任した黒田善孝も沈黙を守ったため、「反社との面会」が具体的に何を指すのかは一切明らかにされなかった。
 しかし本誌の取材によって、当時問題になった「反社との面会」の具体的な中身、そして現在の黒田電気が抱える課題が浮かびあがってきた。
 黒田電気によると、前社長・黒田善孝が反社と面会した事実は、次のような経緯で判明したという。
 2007年5月31日、総会屋のT(東京・中央区に事務所がある)が突然、黒田電気に電話で面会を申し入れてきた。
 いまや絶滅危惧種といわれる総会屋だが、Tは数少ない「現役」として活動。企業の総務関係者のあいだでは「現在最も先鋭的な総会屋」といわれている。最近も、若い女性に人気のファッションイベント「東京ガールズコレクション」を運営する「ファッションウォーク」(未上場)に株付けしたことが話題になった。
 そのTから突然の連絡。「いったい何事か」と黒田電気の幹部たちはいぶかったという。
 翌6月1日、黒田電気東京本社(当時は東京・港区港南)を訪れたTは「創業家(黒田善孝)をもっと大切に扱え」という主旨の発言を繰り返したという。
 Tが辞去すると、黒田電気が事前に依頼していた興信所のスタッフが尾行を開始。Tの自宅をつきとめると、24時間体制で監視を続けたという。
 しばらく動きはなかったが、数日たってTが動く。6月5日の昼ころ、高級外車を自ら運転して自宅を出ると、東京駅八重洲口で短髪の男を拾い、帝国ホテルに乗り付ける。短髪男がクルマから降り、ホテルのロビーにある喫茶スペースで、ある人物と落ち合い、40分ほど話し合う。
 短髪男は用が済むと、再びTの運転するクルマに乗り込み東京駅へ。新幹線に乗って名古屋で降り、妻と娘らしき女2人と合流、買い物などを楽しんだあと市内のホテルに1泊。翌日、新幹線で広島の自宅に帰った。
 黒田電気が調べたところ、短髪男は広島県を拠点とする指定暴力団K会の傘下にあるH組のH組長だった。H組長が帝国ホテルで会っていたのは黒田善孝。Hと黒田がホテルのロビーで向かい合って座る姿は、興信所のスタッフによって写真に収められていた。
 結局、「反社と面会」の動かぬ証拠を突きつけられた黒田は、社長辞任を了承する。説得したのは、当時黒田電気の監査役だった大野真義(大阪大学名誉教授)。大阪府公安委員長を務めたこともある斯界の有力者だ。その大野がいう。
「写真まで撮られたのだから仕方がないと、善孝さんには納得してもらった。辞任理由は『一身上の都合』でよいと私は思ったが、社内の一部から『反社と面会した事実を書くべきだ』と強硬な意見が出て、結局そうなった」
 一方の黒田善孝は本誌の取材に、H組長と会った事実を認めつつ、疑わしい関係はないとこう主張する。
 「H組長とはある人の紹介で会いました。最初は相手が暴力団だとは知らなかった。会うと、会社としてでなく個人としての不動産取引を持ちかけられ、その場は『検討します』といって引き取った。そして取引話をお断りするために帝国ホテルへ行った。会ったのはその2回だけです」
 何らやましいところはないと、黒田善孝は強調し、総会屋のTとも「関係は一切ない」という。Tが「創業家を大切にしろ」と会社に要求したとされる一件も、「なぜそんなことをいうのか、さっぱりわからない」という。
(後略)

 

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