(前略)
A 何でもありの復興関連株相場は5月で一巡した感じ。いま復興関連株は脱原発、新エネルギー関連株に衣替えして第2ラウンドに突入した。きっかけはソフトバンクの孫正義社長が全国10カ所にメガソーラー(太陽光発電所)を建設すると表明したこと。そのすぐ後に、経産省が自然エネルギー普及促進を狙った「サンライズ計画」をまとめて、その目玉政策を菅首相が、5月のG8(先進国首脳会議)で表明したことで太陽光関連株に火がついた。
C 太陽光パネルを設置可能な屋根すべてに取り付けるってやつね。設置面積を2030年までに現在の15倍に増やして、設置コストを火力発電並みの6分の1に引き下げるとか。本当にできるかどうかは疑わしいけど、いまは金融相場だから、こうした材料が出てくるだけで関連銘柄は人気化する。
B 退陣表明したはずの菅首相が、今度は新エネルギー庁を作るなんて言い出したしね。
A それは焼け太りを狙った経産省幹部のアイデアの受け売り。そもそも「サンライズ計画」だって、経産省が正式に公表もしていない政策に海江田大臣の了解なく菅首相が飛びついて、勝手に国際公約にした噴飯ものの政策だ。
C それでも脱原発の流れは止められないから、新政権ができても新エネルギー庁を作る話は継続するだろうね。特にソフトバンクが絡むとなると、電力業界の規制緩和が思いのほか進むかもしれない。
A 孫社長と神奈川県の黒岩祐治知事の呼びかけで、太陽光発電の普及促進を狙った「自然エネルギー協議会」が7月に発足することが決まった。参加するのは6月8日現在で神奈川、埼玉、静岡、大阪、福岡、北海道など31道府県。太陽光や風力、地熱発電などの普及拡大に向けた連携、情報交換をするという。要は地方を味方につけて脱原発のためのメガソーラーを全国各地に作ろうという戦略。
C 太陽光発電の買い取り制度は基本的に個人が対象で、しかも余剰電力だけ。買い取り価格は通常電力の4倍弱なので、補助金と合わせて10年程度で設置費用を回収できる。しかし、法人の買い取り価格はその半分以下。欧州のように、法人、個人関係なく、通常電力の4倍程度で全量買い取りにしない限り、メガソーラーで採算をとるのは至難の業だ。
B となると、太陽光発電の買い取り制度の法改正が必要になるね。
C その通り。それに休耕田や耕作放棄地のような農地の用途規制の緩和も欠かせない。つまり、孫社長は複数の地方政府を巻き込み、国に規制緩和を要求する方が早いと判断したのだろう。用地取得も断然有利になる。耕作放棄地や休耕田の2割に太陽電池を設置すれば、原発50基に相当する5000万kWh、全国の電力需要の20%の電力が得られるそうだ。
B ソフトバンクは、パッケージソフトの流通から始まって、IT財閥、携帯電話会社へと変遷したけど、NTTの次は電力会社に寄生しようという経営戦略だね。
C 人聞きの悪いことを言わないように。確かに「庇を借りて母屋を取る」的な経営戦略ではあるけど、ソフトバンクはいまや6300億円の営業利益を稼ぐ巨大企業。東京電力の原発賠償金を業界全体で10年間にわたって供出しなければならない電力業界は経営的にも苦しい状況にある。現状で、ソフトバンクに太刀打ちできるだけの体力を持つ電力会社はなくなった。体力も政治力もある巨人が、脱原発という世論の後押しを受けながら満を持して電力事業に新規参入しようという構図だよ。
A 面白いのは、ニュースキャスターから神奈川県知事に転身した黒岩知事と孫社長の連携。黒岩知事は太陽光パネルを4年間で県内200万戸に導入する「かながわソーラーバンク構想」を掲げている。しかも、県が信用保証会社を作ってローン契約に関わることで、各家庭は実質無料でソーラーパネルを設置できるという。
B そうなると、脱原発関連銘柄の中核は太陽光発電関連になるね。(後略)