(前略)
民主党内では、7月上旬ともいわれる代表選に向けた動きが加速している。下馬評では野田佳彦財務相が有利といわていれる。これは財務省にとって願ってもない展開だ。
野田氏を推しているのは仙谷由人官房副長官。その仙谷氏は自民党との大連立を狙っている。自民党の谷垣禎一総裁が増税論者なので、同じく増税論者の野田氏を首相に据えるのが好都合と考えている。
実は現職の財務大臣である野田氏も、元財務大臣の谷垣氏も、財務官僚にたっぷり洗脳されている。2人の主張は、財務省のそれと寸分も違わない。つまり2人の主張は一緒。
当面の焦点は、東日本大震災からの本格的な復興策を盛り込んだ第2次補正予算だが、この予算を組むうえでも野田・谷垣コンビは最適とみなされている。
民主党は自民党の復興基本法をほぼ丸呑みした。それは財源として復興債を発行するというものだが、実は復興債は「つなぎ国債」であって、その償還財源を手当てする形になっている。
要するに、復興財源を1年手当すれば復興増税だが、仮に3年で手当てしても実質、復興増税と変わりはない。つなぎ国債という手法は増税の変形である。1991年の湾岸戦争で多国籍軍支援を調達するために発行した臨時特別公債もそうだし、94年に実施した所得税減税も、3年後の消費税率引き上げを担保にした一種のつなぎ国債である。
ちなみに後者については、98年に消費税を引き上げた途端、景気の後退を招いてしまった。これについて財務省は、消費税率の引き上げが原因とは言わずに、アジア危機など金融危機が景気後退の原因だと言っている。しかし金融危機がマクロ経済に及ぼす影響が不確かなのに対し、消費税率の引き上げが消費に及ぼす悪影響は確かである。
いずれにしても、復興財源の手当てには事実上の増税がセットされているので、日本経済に悪影響を与えるのは確実だ。しかし野田氏は、首相になった暁にはその財務省シナリオを忠実になぞって動くだろう。谷垣・自民党もそれに協力する。「復興増税」に関してはすでに事実上「大連立」が成立しているのだ。
(中略)
増税路線が明確になる一方で、役人天国の加速が懸念されている。鍵を握るのが、6月3日に国会に提出された「公務員制度改革法案」と「給与削減法案」だ。
前者は、労働基本権(協約締結権と争議権)が制約されていた一般公務員に、協約締結権を付与することを主眼とし、後者は、震災対応のために公務員の給与を時限的に(2013年度まで)、人事院勧告より5〜10%深堀り削減するというものだ。
しかし給与削減法案をめぐっては、西岡武夫参院議長が「人事院の了解が得られない限り、(参院では)議長として付託する考えはない」と発言、すでに混乱の様相を呈している。もともと民主党はマニフェストで「公務員の人件費2割削減」を謳っていたはずだ。なのに「人事院の了解が得られない限り給与カットできない」というのでは、2割どころか5%の削減すら不可能になる。
給与削減法案よりさらに問題なのが公務員制度改革法案だ。(後略)