昨年4月、家電量販店最大手の「ヤマダ電機」が都市型店舗「LABI新宿東口館」をオープンした。業界首位のヤマダが、ヨドバシカメラの牙城である新宿に殴り込みをかけたと、話題になったのはまだ記憶に新しい。
JR新宿駅と西武新宿駅のほぼ中間、靖国通りに面し、目と鼻の先には日本最大の歓楽街である新宿歌舞伎町が控えるという好立地。しかも、10階建てのビ ルの地下2階から地上7階までが売り場の大型店とあって、連日、多数の客でにぎわっている。
ビル自体の意匠も相当凝っていて、なめらかなカーブを描く壁面には大型ビジョンが張りつけられ、道行く人たちの視線を集めている。この LABI新宿東口館、いまや「新宿アルタ」に取って代わる新宿・東口の新ランドマークともいわれているのだが、実はこの新名所をめぐり、「不透明な不動産取引」が取りざたされている。
このビルの所有者は、ヤマダではなく、新宿区内に本社をおくU社。不動産、パチンコ・パチスロ、フィットネス、飲食店、スーパーなどを幅広く展開する「総合アミューズメントカンパニー」だ。1952年に、パチンコ店に景品用菓子などを卸す事業を始めたのが同社の創業で、67年に都内にパチンコ店を開業。以来、都内を中心にパチンコ店を次々にオープンし、パチンコを中心に業容を拡大してきた。
ところで問題のビルである。場所が場所だけに、完成までには誰もが想像するように様々な紆余曲折があった。そのすべてを書くには紙数が足りないため、本稿では要点のみ記すこととする。
U社は2007年5月、ビルの建築並びに不動産の取得資金として、310億円の融資を三井住友を筆頭とするシンジケートローンから受けた。内訳は、三井住友(230億円)、東京スター銀行(40億円)、関西アーバン銀行(20億円)、さわやか信用金庫(20億円)、城北信用金庫(10億円)で ある。
その2カ月前の同年3月には、テナント入りが決まっていたヤマダ電機から、保証金85億円の支払いを受けている。この都合395億円の資金が、用地買収とビル建設の原資となるわけだが、実はU社は、三井住友などから融資を受ける以前に、別の金融機関から借り入れを起こしていた。
その金融機関は「メリルリンチ日本ファイナンス」。三井住友などから融資を受ける約半年前の06年10月に、230億円の融資を受けている。メリルリンチからのこの借り入れは、結局、「借り換え」の形になって、今は解消している。
「このメリルリンチから三井住友中心のシンジケートローンへの借り換えは、今から考えると非常に大きな意味があった。当時は単に、メリルより有利なローンに切り替えたのだろうという程度の認識でしたが、この借り換えの裏で、不透明な不動産取引がおこなわれていたのです」
こう語るのは、U社の関係者である。(後略)