ダイエーやクラシエホールディングス(旧カネボウ)などを手がけてきた国内プライベートエクイティファンドの草分け「アドバンテッジパートナーズ」(AP)が、出口戦略を急いでいる。
先ごろサッポロホールディングスがポッカコーポレーションの買収を発表した。この買収はビール大手を軸とした飲料メーカーの再編として位置づけられるが、実は「ポッカの筆頭株主であるAPのやむにやまれぬ事情もあった」(金融関係者)という。その事情とは、東京スター銀行買収の大誤算である。
東京スターは1999年の経営破綻後、米大手ファンドのローンスターに約400億円で買収され、その後は破綻信金やノンバンクを買い漁るなど強引な拡大路線を突っ走ったのが徒となり、資産が劣化。にもかかわらず、APは2008年に約2500億円という途方もない高値で同行を買収した。買収資金はローンスターや新生銀行、あおぞら銀行などから約1700億円を借り入れて調達、返済原資には東京スター株の配当を充てることになっていた。しかし案の定、東京スターはすぐさま赤字に転落、結局は銀行団が設立するファンドへの売却を検討せざるを得ない事態に追い込まれた。
同じくAP銘柄で、焼肉チェーン「牛角」などを展開するレックス・ホールディングスも、1000億円規模の有利子負債を抱えて債務超過に転落、傘下の高級スーパー・成城石井の売却を強いられている。いずれにしても東京スター絡みで膨大な損失を被るAPは、出口戦略で資金繰りをつけるしかない。そこで「ポッカの次」と目されているのが、「APが大株主の飲食関連チェーンK社の株式公開、もしくは売却」(大手外資ファンド)。因みにこのK社、ポッカも株主に名を連ねている。
東日本大震災で大揺れとなった株式市場だが、西武ホールディングスがいよいよ再上場との情報がある。同社は2004年に経営危機に陥ったが、米大手投資ファンドのサーベラス・ジャパンが筆頭株主となり、メーンバンクのみずほコーポレート銀行管理下で再建を進めてきた。
そのほか、電機、食品、製薬セクターで事業買収・売却や海外企業を巻き込んだ複数の大型再編が取り沙汰され、流通では大手商社の川下戦略のターゲットになっているスーパー、百貨店の行方が焦点。穀物や資源の川上から川下まで大手商社の覇権争いが本格化するなか、三菱商事、三井物産で大型出資を狙う動きがあり、伊藤忠商事は「阪急阪神、大丸松坂屋など百貨店の取り込みを狙っている」(業界関係者)という。
一方、その陰でMBO(経営陣の自社買収)による有力上場企業の非公開化が進んでいることも見逃せない。今年に入って、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、幻冬舎、アートコーポレーションなど早くも6社がMBOを発表、もちろん過去最多のペースである。背景には、高い上場維持コストや、投資家や株価に左右されずに迅速に意志決定するという狙いがあるが、実はそれだけではない。(後略)