記事(一部抜粋):2011年4月掲載

政 治

無策ぼろぼろ菅政権

今こそ国の力が試される【霞が関コンフィデンシャル】

(前略)
 計画停電(輪番停電)では、菅政権の政治ショーの演出が目立った。当初、計画停電は13日午後6時半に東京電力から公表される予定だった。しかし、菅は自分で国民へ語ると言いだし、午後7時49分から記者会見を開いた。それで終わりかと思ったら、官房長官の枝野幸男、経済産業相の海江田万里、節電啓発相の蓮舫が次々と国民に節電を訴えた。東京電力が発表したのは結局、午後8時20分。ただでさえ、遅れていた各鉄道会社への連絡がさらに遅れ、運行スケジュールが決められずに大混乱を招いた。
 翌14日、週明けの首都圏の足は完全に止められた。情報不足が混乱を招き、各駅のバス停、タクシー乗り場には早朝から黒山の人だかりができていた。
 この光景はまさしく官邸の愚挙の結果といっていいだろう。まったくといっていいくらい準備が整っていなかった。公共交通機関は運休になったり、運行間隔を開けたりしたので、サラリーマンが大ラッシュのなかを長時間かけて通勤する苦労を被ったのだ。菅政権の政治ショーのために計画停電の発表が遅れたためだ。
 そもそも計画停電は、超巨大地震が原因で起きた電力不足を補うために、実施するものだ。東電が発表した計画停電は、関東近県1都8県を5つのグループに分け、午前6時20分〜午後10時までの間に順番に3時間程度実施するというもので、東電はじまって以来のことだ。
 実際には14日の計画停電は全面的でなく一部だけ実施。その理由は、公共交通機関などの運休によって電力需要が減ったためだというが、国民は釈然としてない。その背景に「日本で大規模停電は起こらない」というのが常識になっていて、停電を受け入れがたいという国民感情がある。だから、電力を十分に供給できない電力会社に対する批判が先に出てしまう。しかし海外では、予告なしで停電を行うことはよくあることである。
 01年にカリフォルニアで計画停電があった。その方法は日本人には信じがたいものだ。犯罪準備ができないよう、事前に停電する地域・時間帯は一切公表されない。
 だからカリフォルニアの例を「計画停電」と日本語訳するのは適切ではない。英語では「 rolling blackout 」というが、これは「停電が順番に回ってくる」という意味合だ。
 ある時間帯に大規模なエリアが停電になるよりも、一部の地域だけが停電になったほうがいい。その場合の「一部の地域」は運で決まる——。どの地域がそうなるかは運で決めるというのは、ある意味で公平というわけだ。停電が珍しくない海外ならではの話だが、日本人は受け入れられるだろうか。
 事前にかつ丁寧に国民への説明があれば、納得できた人も多いのだろう。しかし、同じような説明(というよりお願い)を、菅以下、枝野、海江田、蓮舫は延々と繰り返すばかり。聞いているほうはたまらない。蓮舫は、記者団から停電開始の時間を問われると、答えられずに陪席していた東電幹部に質問をふっていた。(後略)

 

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