記事(一部抜粋):2011年3月掲載

経 済

メディア淘汰の幕が開いた

【情報源】

 ついにメディア淘汰の幕が開いた。慢性的な経営危機に晒されてきた毎日新聞社が、4月をメドに子会社・スポーツニッポン新聞社との共同持ち株会社による経営統合に踏み切った。「手元資金が枯渇してリストラもままならなくなり、統合を名目にメーンバンクの三菱東京UFJ銀行などからリストラ資金を捻出するしか選択肢はなかった」(金融関係者)という。
 スポニチも、スポーツ紙市場が縮小するなか低落傾向に歯止めがかからない。実は年初に、朝比奈豊・毎日新聞社長が社内向けの年頭所感で「近々、グループ再編に関しての発表があるかもしれない」と発言。さらに森戸幸生・毎日新聞取締役東京本社代表がスポニチの社長に就任したことから、「経営統合は秒読み」と見られていた。
 今後は否応なしにリストラが加速する。例えば毎日の中部本社は「事実上、支局レベルに格下げし、大幅な人員削減に踏み切る」(毎日関係者)。いまや同本社の経済部記者はわずか2人。「発表もの」はもう共同通信に頼るしかない。毎日は2009年11月に共同通信に加盟しているが、今後は全国レベルで共同への依存度が高まる。「すでに毎日からは配信についての質量の要求が増している」(共同社会部幹部)という。
 資産売却も進む。名門「ウェスティンナゴヤキャッスル」などを経営する持分法適用会社・ナゴヤキャッスル(名古屋市)株の、トヨタ自動車系の東和不動産など地元大手企業への売却打診が囁かれ、以前から取り沙汰されてきた東京本社のパレスサイドビルのある東京・竹橋地区再開発計画が動き出す可能性もある。『週刊エコノミスト』や『サンデー毎日』の休廃刊も視野に入ってくる。ただし統合にはいくつもの高いハードルが立ちはだかる。毎日より水準が高いスポニチの給与をいかに下げるか。関連会社という天下り先も減り、人員削減は難航が必至。とても一筋縄ではいきそうにない。
 追い詰められているのは毎日だけではない。発行部数の激減に歯止めがかからず、他社に先駆けて東京地区の夕刊廃止に踏み切った産経新聞、10期連続の赤字を強いられ、虎の子の電通株を食い潰して延命している時事通信は、もはや自力での生き残りが難しい。時事は外信とスポーツ部門を分離後に読売新聞に救済されるとの噂が絶えず、産経は親会社のフジ・メディアHDによる支援の行方や、提携関係にある米大手通信社・ブルームバーグなど外資との連携に注目が集まる。希望退職や賞与ばかりか、給与カットにまで手をつけた朝日新聞、戦後初の赤字転落、社運を賭けた電子版も期待はずれの日本経済新聞も、瀬戸際に立っていることに変わりはない。
 大手新聞が売り上げを維持するには、紙媒体以外に収益源を求めるしかない。そのひとつがニュース配信事業。すでに読売は第2県紙への配信業務に参入、今後は通信社を巻き込んだ緩やかな連合体の模索も焦点になる。
 新聞業界は、つるべ落としの販売部数の低下、ネット媒体の台頭に加え、印刷設備や販売店維持費などの固定費負担が重く、広告収入に見合った制作費の削減が可能なテレビ局より厳しい状況にある。しかも単なる効率化は取材・編集の現場にいびつなシワ寄せとなって表れる。「肩たたきされても、自発的に退社する記者は少なくなっている」(大手紙幹部)。それもそのはず、もはや同業他社への転職は難しく、かといってつぶしが利かない職種の代表格だけに、他業界への転身は困難を極める。社員のモチベーションの低下が媒体価値の低下を招く負の連鎖が始まろうとしている。(後略)

 

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