記事(一部抜粋):2011年2月掲載

経 済

中国やインドが加盟しないTPPに日本のメリットなし

【証券マン・オフレコ座談会】

(前略)
A 小沢一郎がテレビで言っていたように、TPPは農業の分野だけの影響にとどまらない。毎年11月頃に米国から突き付けられていた「年次改善要望書」の形を変えたモノと考えたほうがいい。金融、保険、医療、派遣労働、公共調達、電波・放送に至るまで、障壁をなくして開放しなくてはならなくなる。
B でも、その電波・放送に絡むマスメディアのすべてが、「早期のTPP参加」を提唱しているよ。だから産業の開放だけが目的なんじゃないの?
A 金額ベースで見ると、農業のウエイトはそれほど高くない。年次改革要望書でも、郵貯などの金融の開放の要求が多かった。その「郵政民営化」を要求したのが小泉政権だった。
C 読売を筆頭にマスメディアが「参加しないと産業が空洞化する」とか「参加すればこれだけの国益が見込める」と連呼するのは、協力すれば電波・放送、さらには新聞の再販制度、記者クラブ制度が例外として免除されると思っているから。そもそも、こんな制度で守られている業界が、競争原理を説く資格があるはずがない。
A 外務大臣の前原誠司も、農業をヤリ玉に挙げるヒマがあったらマスメディアに競争原理を説いてみろと言いたい。できっこないだろうけど……。
B TPPには中国やインドだけじゃなく、ロシアやEU欧州連合も加盟しないようだね。
A それにタイ、インドネシア、フィリピンも加盟しないようだ。本来、輸出立国である日本にとって、関税撤廃などの貿易協定はメリットに違いない。しかし、それには条件が必要だ。2010年4月の日本からの輸出総額を見ると、アジア諸国全体で56%を占めるまでになった。そのうち中国は30%。ところが米国はというと、カナダを合わせても16%にしかならない。
B 中国やインドが加盟しないTPPに、日本のメリットはないということだね。
C 「地球温暖化」を名目に、米国の勧めで排出権取引を条約に取り込んだ「京都議定書」と同じ。肝腎の米国は、「経済に悪影響」として加盟後すぐに脱退、それに二酸化炭素を大量に垂れ流す中国は、「途上国」との理由で最初から加盟していないため、日本は中国に年間1000億円も排出権料を支払っている。このことに先日、鉄鋼メーカーの知り合いが憤っていた。世界で一番、二酸化炭素をタレ流す米国と中国が加盟していない温暖化防止条約に何の意味があるのかと。
B 温暖化防止を声高に叫んだ御用評論家やメディアの罪は大きいね。たしかに昨年の夏は猛暑だったけど、冬には世界的に寒波になっている。
A 本当に地球温暖化の悪玉が二酸化炭素なら、東京都知事の石原慎太郎が中心となって旗を振った「ディーゼル車規制」などは、その動きに逆行した政策といえる。それを批判したマスコミは一社もなかった。
B ディーゼル車は二酸化炭素の排出がガソリン車に比べてかなり少なかったよね。
A そう。窒素酸化物が問題というなら、その削減目標を達成した車にエコカー補助金を出したり、減税したり、さらにはディーゼル車を推進するために軽油税を大幅に引き下げればよかった。温暖化防止に熱心な欧州では、日本とは逆にディーゼル車が推進されている。
B ところで、日銀の量的緩和の件だけど、株価連動型上場投信(ETF)や上場不動産投信(J—REIT)の買い取りは順調に進んでいるんだろうか?
C これは噂だけど、金融機関が軒並みJ—REIT買いに走った際、金融庁から各金融機関に「デューデリー(不動産の市場価格の算定)はできているのか?」とのヒアリングが入ったとの話がある。その際「できている」と答えたのは静岡銀行だけだったとか。(後略)

 

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