記事(一部抜粋):2011年2月掲載

経 済

大手新興ベンチャーの最終局面

【情報源】

 産業の空洞化が急速に進むなか、わが国の新興市場や新興ベンチャーの空洞化も深刻さを増している。新規上場数はこの4年で9割も減少、なかでもJASDAQやマザーズの新興市場の惨状は目を覆うばかり。投資家の資金はアジアのベンチャーへ流れ、日本のベンチャー企業もアジア市場上場へのシフトが加速している。
 一方で、大手新興ベンチャーの挫折も加速している。その象徴が、昨年末に社長辞任に追い込まれたUSENの宇野康秀氏。振り返れば、ブロードバンドや無料動画配信サービス「Gyao」などを矢継早に立ち上げ、ライブドアや横浜ベイスターズ買収に名乗りを上げた頃が絶頂期だった。その後は、宇野氏肝入りの新規事業が足枷となって単体ベースで6期連続の最終赤字と業績は悪化の一途。やむなく映像や通信、カラオケ事業の売却に踏み切るが、それでも債務超過転落の危機から脱せず、ついに虎の子の人材派遣大手・インテリジェンスを売却。結局、残ったのは父の遺産である有線放送事業のみ。今後は、「400億円の出資・融資を抱える米ゴールドマン・サックスが、USEN本体を売却する可能性もある」(金融関係者)ようだが、急成長ベンチャーの看板を下ろした同社にどれほどの企業価値があるのだろうか。
 モバイルコンテンツ大手のインデックス(JASDAQ上場)も窮地に立たされ、水面下で身売り交渉が進んでいる。ライブドアのニッポン放送買収騒動を尻目にテレビ各局との資本・業務提携を成功させた旧日商岩井出身の創業者・落合正美氏。しかし、強引な国内外のM&Aの失敗で成長戦略は頓挫。四期連続の最終赤字を強いられ、株価は最高値から250分の1以下まで急落している。落合氏保有のインデックス株を巡り暴力団が介在するという不祥事も追い打ちをかけた。金融機関から見放された同社は、資産売却と金策に追われた結果、日本振興銀行に急接近。ところが頼みの綱の振興銀が破綻、同行の見せかけ増資や迂回融資疑惑にも巻き込まれ、資金繰りはさらに悪化。そこで身売り先として「クレディ・スイス系やドイツ銀行系、みずほ証券系、豪系などの投資ファンドが浮上」(大手投資ファンド)している模様だ。落合氏は昨年末に社長を辞任、新興ベンチャーの雄にもいよいよ最終局面が近づいている。
 新興勢力といえば、振興銀傘下で飲食事業を手がけていたジー・コミュニケーション(以下ジー社)の買収を白紙撤回した外食業界の風雲児・阪神酒販に経営危機説が取り沙汰されている。弱冠35歳の檜垣周作社長は、外食チェーンのアスラポート・ダイニング(ヘラクレス上場)を買収するなど急速に頭角を表し、ジー社買収によりグループで一〇〇〇を超える巨大飲食チェーンに躍り出るはずだった。ところが、買収成立が遅れる間に「取引先に対して、融資要請や支払延期要請をしている」(関西系地銀)という。買収の資金源や桧垣社長の出身であるアサヒビールとの関係など不透明さも指摘され、今後の動向が注目される。
 そのジー社の創業者で、かつてNOVA買収で脚光を浴びた稲吉正樹・いなよしキャピタルパートナーズ社長。しばらく鳴りを潜めていたが、ここにきて再び動き出した。NOVAとジオスを買い戻し、さらには「地元・愛知の学校法人の買収交渉を進め、なんとNOVA大学の設立を目論んでいる」(大手紙デスク)という。(後略)

 

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