記事(一部抜粋):2011年2月掲載

政 治

与謝野を取り込みばらまき拡大 「大連立」の大義名分は「国民生活」

【永田町25時】

 年末までの離党を考えていた小沢一郎は、決断できずに年を越した。昨年11月末には若手100人以上と次々に会食、9月の代表選で自分を支持した議員の胸の内を探った。しかし側近の参院議員会長、輿石東を含め参院側がまとまらなかった。参院議員の多くが連合所属の組織内候補。連合が民主党を支える以上、離党に慎重なのは当然だ。
 1月中といわれる政治資金規正法違反での強制起訴により、小沢は窮地に追い込まれる。世論調査では「強制起訴なら議員辞職を」が60%近い。菅直人や仙谷由人は最低でも離党勧告をし、小沢切りを鮮明にする。その段階で小沢が離党を決断しても、もう遅い。裁判対策に追われ政治資金を配る余裕もなくなる小沢についていく議員はいないだろう。元旦の小沢邸には100人を超える議員が集まったが、ほとんどが義理を果たしただけというレベルだ。
 小沢VS菅・仙谷のバトルは決着がついた。菅改造内閣で小沢系議員は干し上げられた。小沢側近の元幹事長代理、細野豪志は首相補佐官の声がかかると、あっさり飛びついた。党内の小沢離れは急速に進んでいる。
 参院で問責決議を受けていた官房長官の仙谷と国土交通相の馬淵澄夫は閣外に去った。これで野党に審議拒否の理由はなくなり、通常国会の審議は正常にスタートする。しかし参院過半数割れの壁は依然、解消されていない。内閣支持率も改造によってわずかに持ち直したものの、まだ30%前後。小沢とのバトルに勝っても内閣の低迷は続く。
 改造人事をみると、菅が相変わらず仙谷を頼っていることが分かる。仙谷は自らは代表代行に就任し、弟分の枝野幸男を後釜の官房長官に、通常国会乗り切りの要となる国対委員長にはもう1人の弟分である安住淳を据えた。菅を担いだまま、幹事長の岡田克也を差し置いて主導権を確保し、政局を切り回す構えだ。
 改造内閣の目玉は、たちあがれ日本を離党して入閣した経済財政担当相の与謝野馨だった。「党内外の反発を承知で与謝野の入閣を仕掛け、菅を説得したのは仙谷」(菅周辺)。背後には菅政権と自民党の「大連立」を模索する読売新聞会長の渡辺恒雄がいる。与謝野は従前から渡辺を父親のように慕い、身の振り方を相談してきた。年金など社会福祉制度の再構築と、消費税導入による財政再建を柱として日本を立て直すというのが大連立の大義名分。民主党政権を痛烈に批判していた与謝野の不自然な入閣には、大連立構想をそのまま菅政権の延命策に摺り替えようという仙谷戦略がうかがえる。
 4、5月の統一地方選を睨めば、菅はどうしても支持率を上げる必要がある。それには小沢切りだけでは足りない。基礎年金の全額国費負担の確約、TPP(環太平洋戦略的経済協定)加盟に向けた農家保護や中小企業対策など、飴となる施策が必要だ。それを政界きっての政策通とされる与謝野に担わせ、支持率向上を狙う。国会では「国民生活」を担保に野党の同調を誘うというのが基本戦略だ。(後略)

 

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