ずばり言おう。多くの国民が今、口には出せないが心の中で感じていることを。「政権交代は誤りだった!」――そうなのだ。
自民党が余りにもひどく、無責任で、1年交代で総選挙もおこなわず首相を繰り出し、国家財政を破綻させて、15年間もGDPの成長がストップしデフレスパイラルから抜け出すことができなかった。何よりも不誠実な感じと、金権腐敗の臭いがフンプンとした。
去年の8月の選挙直前に小沢一郎党首が降りて比較的クリーンと思われた民主党を選べば新しい日本が始まる――誰もがそう思った。余り聞き慣れない言葉もちりばめられてはいたが、「マニフェスト」(政権公約)を読めばなんとなく自民党とは違う「官から民へ」「生活者が第一」の政治が実現するのではないか、と期待した。
そして昨年の8月、待ちに待った政権交代が実現した。期待通り鳩山由紀夫新首相が実現して「東アジア共同体」「日米中正三角形」そして「普天間を最低でも県外」と矢継ぎ早に鍵となるポリシーが発表され、国民の期待はいやが上にも盛り上がった。しかし小沢氏が幹事長に就任し、「陳情を一元化する」といいながら露骨な利権漁りが始まった。自民党は力なく一瞬にして郵政から医師会までの利権を失った。そうこうしているうちに鳩山氏への母親からの巨額な政治献金が報告されていないことが明らかになり、また、日米ではなく日米中とやってしまってアメリカの怒りを買い、鳩山氏の首相の座がグラついてきた。小沢氏の政治資金規正法違反では元秘書で現役の国会議員が逮捕されるなど、民主党はすさまじい逆風にさらされ始めた。
今年の6月には「政治とカネの問題」等の責任をとって鳩山首相は小沢幹事長を「道連れ」に辞任した。国民は、民主党が自民党と寸分違わぬ政党になり果てたことを知り、7月の参院選挙では自民党に勢力を盛り返させ、まだ諦め切れない人々はみんなの党に小さな期待を託した。しかし民主党の党首選が9月におこなわれるにいたって、国民の想像だにしなかったことが起った。「一兵卒」になったはずだった小沢氏が「党首になる」と言って立ち上がったのだ。国民は強い拒否反応を示したが、議員たちは「国民第一」をほっぽり出して権力闘争を展開した。菅直人は辛勝したが、党内亀裂の傷跡が如実に残った。
この間、新内閣がやったことは意味のないマニフェストの実行宣言と結局、自民党路線への帰着(普天間県外→そして辺野古へ、八ツ場ダム中止→そして棚上げ等)であった。そしてようやく党務などの内向き行事がすべて終わり、予算とAPECなど外交に集中できる、と思いきや新内閣は激震に見舞われる。
尖閣諸島にて操業中の中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突事故を起こし、漁船乗組員が公務執行妨害の罪で逮捕、と思いきや船長以外を釈放し、船長も「粛々と国内法で」やらずに突如解放。おまけに「極秘」とされたビデオがあっさりネット上で公開されてしまった。極秘といいながら海保内部では誰でもアクセス可能だったことが露呈。自ら管理する行政府がどのような仕組みになっているか「全くご存じない」ことがバレてしまった。ついでに言えば、尖閣問題では「国民には秘密裏に」懸案処理するという暗黙の合意があったことを知らなかったことが、中国側を激怒させた原因であったこともバレてしまった。
北方領土に関しても、ロシアの実効支配を認めながら根気強く返還交渉を続けて、ようやく二島返還から一歩進めて面積等分くらいまでは行けそうになっていた自民党の「アヒルの水掻き」を、前原誠司外相の「日本固有の領土、厳重抗議」でぶっ飛ばしてしまった。ロシアは日ソ共同宣言以降、合意していた二島返還論も反故にした。
この民主党政権は何も考えてないし、何も知らない。政権担当能力がないだけではなく、毎日外交と内政で日本の財産をぶち壊しにしている。無能なだけではなく、危険かつ破壊的な政権である。