記事(一部抜粋):2010年12月掲載

経 済

「官(菅)製不況」がやって来る

【情報源】

 民主党政権が立ち往生し、経済が構造的衰退モードに突入するなか、検察不祥事で司法、中露領土問題では外交が地に墜ち、国際テロ情報流出によって外事警察まで崩壊してしまった。
 そうしたなか、民主党政権による「行政不況」再燃の懸念が出てきた。事務次官会議の事実上の復活や「現役出向」の名を借りた天下り容認、公務員人件費2割削減の頓挫に消費税増税、さらには財務省のシナリオによる概算要求の一律10%削減……。脱・官僚をいの一番に掲げたはずの民主党政権が、仙谷由人官房長官を筆頭に見事なまでに官僚に取り込まれている。「事業仕分け」も、官僚システムを壊さない限り本来の財源など見つかるはずもない。それどころか、「事業仕分けをアリバイに、削減の限界をアピールすることで消費税増税へ誘導する官僚の巧妙なシナリオ」(永田町関係者)さえ透けて見える。
 菅政権は、経済政策の柱として「第3の道」を打ち出し、雇用と需要に重点を置いた財政支出で景気回復と成長を目指すという。その主財源は増税で賄い、環境・エネルギーなどの成長分野へ集中投資し成長を果たすというのだが、その根源は「増税論」にほかならない。消費税増税などで得た財源を政府・官僚が主導して配分しようとの目論みであり、要は「税金をたくさん集めて、官僚主導でたくさん配る」ということである。
 その結果、何が起きるのかといえば、霞が関の新たな利権確保である。成長分野への集中投資を官僚がコントロールすれば護送船団と化し、公共事業にのめり込んだ「第1の道」に逆戻りである。政官がカネの使い方を主導すれば非効率な資金配分が温存され、生産性の向上につながらないからだ。結局は、「第3の道」が「第2の公共事業」を生み出してしまう。新たな天下り法人も続々と誕生するのはいうまでもない。
 政府は「増税で経済成長」というが、経済成長は基本的に「民間」の問題で、民間企業が実現すべきものである。政府の介入は阻害要因になるだけだ。最大の成長戦略は、「政府が何をするか」ではなく、「何をしないか」であり、唯一、政府に求められるのは、官僚の抵抗が強い規制改革を実行に移すことだけだ。その最大の障壁が旧来型の官僚システムであり、この改革なくしては、成長を目指した戦略も絵に描いたモチに過ぎなくなる。
 ところが、民主党政権はいまだ官主導の非効率な支出を続けている。このままでは今度こそ、わが国はグローバルな成長分野で取り返しのつかない出遅れを招きかねない。
 増税による経済成長を強調するのは、政府・官僚に歳出や既得権益のムダを徹底排除する意図がないことの証左であり、最悪のシナリオは、なし崩し的に「単なる大増税路線」を突っ走ってしまうことである。
 政府が成長戦略と位置づける分野は、すでに民間が十分に認識している。にもかかわらず成長がままならないのは、官の利権確保のための過度な規制や制度的欠陥が障壁になっているからだ。繰り返すが、そのシステムを解体しない限り、官僚支配は続き、新たな財源など決して見つからない。(後略)

 

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