経 済
「第二地銀に迫る大再編の波
地域経済はいまや風前の灯【金融ジャーナリスト匿名座談会】
(前略)
B 貸倒引当金が減ったのは「中小企業金融円滑化法」の影響に尽きる。亀井静香・前金融相の肝入りで導入された同法は、「モラトリアム法」という別名で呼ばれるように、債務者企業の金利返済を猶予するというものだ。しかも、猶予しても不良債権にはカウントされないから、貸倒引当金が増加することはない。つまり表面上、不良債権が減っていることになるが、果たして、その実態はどうなのか。
A 円滑化法は来年3月末までの時限立法だ。延長しなければ、この恩恵も消え失せる。
B 最近、中小企業の倒産は大幅に減少している。円滑化法が支えになっているからだ。支えがなくなれば倒産は増えるだろう。倒産が増えれば、銀行の不良債権も増えて貸倒引当金の繰入額も増加に転じる。好決算はそこで終わりという話になりかねない。
C 円滑化法の期限を待たずとも、来年1月には銀行が自ら、金利返済を猶予した先に対する見直しを行なうことになっている。円滑化法適用から1年目にチェックするというルールになっているからだ。そのときに、「やはり支援しても無駄」ということになれば、支援は打ち切られる。
A しかし、そんな勇気のある銀行は現れるだろうか。政府の顔色をうかがって、そのまま支援を続けるということになりそうな気がする。支援を打ち切ってしまえば、不良債権化する可能性が高い。「まあ、ここは目をつぶって」という結論がみえているような気がする。
B 問題は、金利減免や返済猶予をしている間に、債務者企業の業績が改善するかどうかだ。業績が改善すれば、棚上げされた金利返済を一挙に返済できるだろう。逆に業績が悪化すれば、返済が猶予されていた分、苦しさが余計に増すことになる。麻薬中毒患者が、薬が切れた途端に苦しみ出すようなものだ。
A 政府は円滑化法を導入したものの、効果のある景気対策は実行していない。どう考えても、全国の中小企業の経営は厳しさを増している。
C やはり、円滑化法の打ち切りと同時に企業倒産が増えるのは避けられそうにないね。
A 特に問題なのは地方だ。例えば北海道や東北では、中小企業の倒産件数が急減している。むろん円滑化法に支えられているからで、その支えがなくなったときの影響は甚大だ。
B 地銀や信金などの決算が良いのも円滑化法のおかげだが、それだけに問題は厄介だ。反動は相当大きなものになるだろう。
C とにかく地方の景気はガタガタだ。公共投資が激減したうえに、改正貸金業法の影響で地方の貸金業者や信販会社の倒産が相次いでいる。倒産しなくても実質的に店を閉めている業者は相当な数に上る。要はカネが回らなくなっているわけで、極めて深刻な事態といえる。
A 地方の信販会社には第二地銀などが融資している。これらもいずれは不良債権になるかもしれない。
B 地方の第二地銀が主役になった合併・統合の動きが散発的に起きているが、この動きは今後さらに拡大していくだろう。現実問題として、合併・統合しなければ第二地銀の多くは立ち行かない。
C 中京、東北などで第二地銀の統合の動きが表面化したが、確かに、いまやどこで追随的な動きが出てもおかしくない。それほど不況は全国的に深刻の度を増している。
A 九州中部で合併話がちらついているし、中国地方でも噂がある。もちろん北関東は合併の地雷原のようなところだ。北陸でもいつ起きてもおかしくない。
B そのなかでも注目は、やはり北関東だろう。関東というと東京に近いこともあり、地方といってもそれほど不況は深刻ではないイメージがあるが、それは大間違い。しかも、北関東は経営体力のある有力地銀が多いので、その隙間で営業せざるをえない第二地銀はただでさえ大変だ。先細り傾向が歴然としている。
C 北関東の有力地銀は、地元の第二地銀と手を結ぶことなどまったく考えていない。隣県の第二地銀との合従連衡という話もなさそうだ。だから第二地銀同士でやっていくしかない。もちろん、それはリストラ型の経営統合にならざるをえない。だからこそ、各行とも二の足を踏んでいるわけだが。
A ほとんどの都道府県で第二地銀は厳しい立場にある。頭の上に地銀が君臨し、足元では信金が頑張っている。信金も厳しい環境のなか、死に物狂いだからね。(後略)