記事(一部抜粋):2010年12月掲載

政 治

自民は派閥解体、民主は小沢切り ベテラン追放で変貌する永田町

【永田町25時】

 自民党内に派閥解体の動きがある。言い出したのは幹事長の石原伸晃。背後に元首相の安倍晋三がいる。自民党のイメージを変え、民主党にとって代わる布石のひとつと考えている。
 もはや自民党の派閥にはかつての力がない。数のうえで最大の町村派は、町村信孝が10月の衆院補欠選で当選、派閥に凱旋したが、まとまりがない。オーナー的存在だった元首相の森喜朗と安倍が距離を置いているからだ。森は先の参院議員会長選で氾濫した若手を除名しないことに不満を抱き、安倍はもはや派閥の時代は終わったと思っている。
 他の派閥はもっと酷い。山崎派は山崎拓が落選中で復帰の見込みがなく事実上の消滅状態。古賀派や伊吹派は、体裁を辛うじて保っているものの、所属議員の忠誠心はお寒い。カネの面倒もポストの工面もできず、所属議員に具体的なメリットがないからだ。そうした情勢を踏まえて、石原が党改革を検討する政権戦略会議で派閥解体を持ち出した。
 ただ、現時点では引退するしかない山崎が賛成しただけで、伊吹文明や古賀誠は「石原や安倍に主導権を取られる不安」(若手)から反対を表明。伊吹が石原に「君は何のために派閥解消と言うのか」と詰め寄る場面もあり、いったん頓挫の形になっている。
 しかし森、古賀、伊吹らの時代は過ぎ去った。安倍や石原は派閥を解体することで長老連中を葬り去り、自民党の再生を実現させる戦略。党内の中堅・若手に同調の動きが強く、次の総選挙が見えてくれば一気に解体が加速する。
 実力をふるった政治家が消えれば、政党のイメージが変わる。民主党は何といっても悪役イメージの強い小沢一郎切りが決め手。支持率低迷に悩む首相の菅直人、官房長長官の仙谷由人にとっては最後の切り札といっていい。しかもこれには一石三鳥ぐらいの効果がる。支持率回復のほか、公明党との協調、党内反対勢力の壊滅。尖閣事件をはじめ外交の失態が続き、景気への無策、国会運営で泥沼の道を進む菅政権にとってはタイミングを誤らなければ特効薬になる。
 開会中の臨時国会で公明党が当初の方針を変えて補正予算案に反対する理由は、菅や仙谷が小沢の国会招致を決断しないからだ。来春の統一地方選を考えれば、金銭に汚れたイメージの小沢を庇う菅政権に協力はできない。創価学会婦人部が怒りの声を挙げるのは明らかだ。菅側の不安は小沢一派の離党にあった。だが、力を失った小沢についていく可能性のある議員の数は日々減っている。
 小沢は幹事長の岡田克也の呼び掛けさえ無視する傲慢ぶりを続けている。来春までに、小沢の民主党除名などの動きが出てくるのが普通の成り行きだろう。
 自社対決のいわゆる五五年体制からのベテラン議員が国会から消えていく流れは、次の総選挙までに動かし難くなるに違いない。そうなれば国会は大きく変貌する。(後略)

 

※バックナンバーは1冊1,100円(税別)にてご注文承ります。 本サイトの他、オンライン書店Fujisan.co.jpからもご注文いただけます。
記事検索

【記事一覧へ】