記事(一部抜粋):2010年10月掲載

政 治

党のカネも官房機密費も使えない

小沢は「手足をもがれた芋虫」同然【永田町25時】

 民主党代表選最中の9月26日夜、前官房長官の平野博文が鳩山グループの若手20人を東京・赤坂の居酒屋に集めた。「鳩山さんは仙谷由人・官房長官をけしからんと言っている」。小沢一郎への投票を依頼した後、帰り際に封筒を一人ひとりに手渡した。中身は現金100万円。翌日、議員の1人が「このカネは政治資金として届けなくてはいいのか」と秘書に調べさせたため、話が永田町に広まった。当選1回の議員は裏ガネの扱いがわからなかったらしい。その日、平野が配ったカネは総額2000万円、おそらく官房長官時代に官房機密費を溜め込んだものだろう。
 政界には、権力者が領収書なしに自由に使える莫大な資金がある。ひとつは首相官邸にある官房機密費、もうひとつは政党の幹事長らが「組織対策費などの名目で使うカネだ。国会は議員1人に月額65万円の立法事務費を支給するが、ほとんどの政党はこれを一括して受け取り、活動資金としてプールする。党の実権を握った者がこれを使うことができるのだ。
 代表選中にマスコミの一部に匿名で民主党の内部調査資料が郵送された。小沢が幹事長や代表であった2006年4月から10年6月までの間に、「組織対策費」などの名目で、小沢に近い議員に総額37億円が支出され、使途が不明という内容だ。06年9月、党財務委員長だった副代表、山岡賢次に6800万円が最初で、その後、今年六月の菅政権発足までに、山岡や後任の財務委員長・佐藤泰介の二人に計約三六億円、そのほか参院議員会長の輿石東に9500万円などとなっており具体的だ。菅政権ができて小沢の力がなくなると支出は無くなっている。
 小沢はなぜ、負ける可能性が強かった今回の代表選に出馬したのだろうか。検察審査会が二度目の「起訴相当」を出して起訴され刑事被告人となるのを、首相となって逃れるためというのがひとつの説明だ。ただもうひとつ、官房機密費や党のカネを政敵となった菅や仙谷に握られるのが我慢できなかったという見方がある。「カネこそ力」が小沢の政治信条だとすれば説得力は十分ある。
 小沢は党首だった新進党時代の1996年8月、幹事長の米沢隆に約4億円、後任幹事長の西岡武夫に約30億円、参院議員だった故永野茂門に約1億円の党のカネを支出。自由党時代にも幹事長だった野田毅に約10億円、後任の藤井裕久に約31億円を支出していたという政治資金収支報告書を分析した調査結果もある。藤井は「収支報告にそうなっているかもしれないが、私はまったく知らない」と証言している。実際に党の議員に渡ったものもあるだろうが、小沢が幹事長らの名前を使ってどこかへ消してしまった疑いが濃厚だ。(後略)

 

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