経 済
動き出す「地銀再編」
発火点は「北関東」と「瀬戸内」【金融ジャーナリスト匿名座談会】
(前略)
B まあ、りそなですぐに何かが起きるわけではないとすると、いったい、どこに動きがあると思う?
C ズバリ言って、地銀だろう。地銀の合併へのマグマは相当溜まっているよ。
A そう。十六銀行と岐阜銀行の統合は話が浮上したが、今後、こうした統合情報が乱れ飛ぶようになると思う。なにしろ「下地」は十分にあるのだから。
B 大手地銀はこの間、不良債権処理を着実に進めてきた。資産内容は改善され、経営状況も良くなっている。中堅クラスも経営状況はかなり改善してきている。
A その通りだと思う。しかし次のビジョンを描くことができないという点が地銀に共通する最大の問題だ。地方では地域経済の悪化が深刻化する一方。「地域とともに生きる」という言葉は、どこの地銀も言ってきたことだが、「地域とともに衰退する」と開き直ることができるのか。
C 非上場企業であれば、それもありだろう。しかし地銀の大半は上場企業だ。株主に対して、「地域とともに衰退する」なんて理屈が通るはずはない。何が何でも成長を目指さなければならない。
A 特に大変なのが第二地銀だ。地元の優良企業は地銀に押さえられている。下からは信用金庫の攻勢がある。挟み撃ちにされた格好で、形勢は決して良くない。
B 地銀の一番の問題は、収益力に比べてコストが高い点だ。システム化を一気に進めてコストを下げることができればいいのだが、システム投資には巨額の費用がかかる。というより、そもそもがシステム投資によって効率化できるほどの規模ではない。中途半端なんだ。
A だからこそ地銀の再編が取り沙汰さているわけだが、なかなか具体化しない。
C 九州のケースが影響しているんだろう。九州の雄である福岡銀行は地元の第二地銀を吸収したが、思っていたような効果を上げていない。なぜかというと、人材のレベルに差があり過ぎる。第二地銀の行員に、福岡銀行の行員と同じ業務を担わせるのは難しいというんだ。
B 福岡銀行は都銀並みだものね。
A つまり、地銀が経営統合に踏み切れない理由として福岡銀行のケースが挙げられているというわけ?
C そう。「だから経営統合は慎重にすべし」という理由付けに使われている。
A しかし、合併や経営統合が重要な選択肢であることに変わりはないだろう。ちょっと思い切れば、すぐに具体化するような状況が全国にゴマンとある。
B 実際、それが今回は中京圏で表面化したわけだけど、今後はどんな展開が予想されると思う?
C やはり焦点になるのは都市部だろう。関東、関西、中京の三大都市圏が震源地になると思う。
A 埼玉の武蔵野銀行は人気の花嫁候補だ。首都圏を地盤としているのに加え、拠点である埼玉県の都市部も伸び続けている。地道な銀行であることも好条件だ。北関東の群馬銀行、常陽銀行が虎視眈々と狙っている。
C 足利銀行も狙っている。ただ、再生して間がないので、すぐには動けないと見られている。しかし、再生の際にスポンサーとなった野村証券が背後に控えていることを考えれば、別の見方もできる。不良債権は一掃されているし、身動きはしやすい。
B 武蔵野銀行は常に埼玉りそな銀行の脅威の下にある。埼玉りそなの前身は旧埼玉銀行。旧埼銀は埼玉県の指定金融機関として、県内では圧倒的な存在だった。いまも地元経済界とは密接な関係を持っている。
C 武蔵野銀が埼玉りそなの脅威をはねのけるためには、合併しかないだろう。一番高く評価してくれた銀行と合併すればいい。金融持ち株会社方式による統合でもいいだろう。
A 群馬銀行も常陽銀行も、埼玉県内に支店網を持っている。経済圏も県境で分断されているわけではない。埼玉と北関東、実に興味深い地域だ(笑)。
B 北関東といえば、第二地銀がみんな小粒だ。この第二地銀がどうなるのかという視点もある。
C だから、群馬銀行が栃木の第二地銀を、足利銀行が群馬の第二地銀を、という相互進出も考えられる。B 北関東自動車道が来年、全線開通し、茨城、栃木、群馬が高速で直接つながる。これによって北関東の経済圏は縦だけでなく横にも広がっていく。群馬、足利、常陽がどう動くか。これは古くて新しいテーマだ。(後略)