記事(一部抜粋):2010年9月掲載

政 治

いまだ払拭できぬ「小沢の呪縛」

「菅包囲網」の形成と「大連立」【永田町25時】

 早ければ11月、遅くとも来年春には衆院は解散――そんな話が国会議員の間で囁かれている。政局の焦点が9月上旬の民主党代表選であるのは間違いないが、菅政権が続こうが続くまいが、解散への流れは変わらないというのだ。
 菅直人の側近の幹事長、枝野幸男が代表選の行方に関連して親しい議員にこう言った。
「いろいろ候補者の名前が出ているが、小沢グループは最終的に海江田万里を立てる。これに鳩山グループと旧民社党グループが協力すると海江田が勝つ。しかし、小沢支配下の海江田では国会が持たない。衆院を解散して信を問うことになる。11月ごろだろう」 
 民主党内では菅包囲網ができあがりつつある。菅を支持していたはずの鳩山由起夫と小沢一郎が接近。鳩山は7月後半から菅批判をしきりに口にし始めた。
「米軍普天間基地の辺野古沖移設を米国の言う通りに決めた」「予算編成を財務省に頼りきっている」「地方分権への取り組みが消極的」
 菅によって権力中枢から外された小沢は、鳩山の変化を見逃さなかった。鳩山に「消費税の増税を持ち出すから参院選で負けた。私たちが辞めた意味がないじゃないですか」と同意を求められると、小沢は「そうだ」と鳩山を煽り立て、一方で側近の山岡賢次らに若手をまとめるよう指示、得意の水面下での多数派工作を本格化させている。したがって枝野の情勢分析は正しい。政治的にはほとんど幼稚園児の鳩山を手玉にとる小沢が本気になれば、菅は政権の座から降ろされる可能性が高い。
 小沢には政権をコントロールしなければならない事情がある。第五検察審査会の小沢に対する再議決は、予定より遅れているが、10月から来年1月までには出る。それが再び「起訴相当」なら小沢は窮地に立つ。小沢と対立したままの菅政権なら、来年の通常国会予算委員会で証人喚問され議員辞職に追い込まれる可能性がある。自民党や共産党も予算を人質にとって証人喚問を要求し、菅は「喜んで」(小沢周辺)応じるだろう。
 ただ、枝野の言い分には矛盾がある。海江田では乗り切れない臨時国会を、菅なら乗り切れるというのか。たしかに菅は自民党に低姿勢だが、自民党も共産党もそれにごまかされて攻撃の手を緩めたりはしない。マニフェスト違反の予算編成や解決不可能な普天間問題を抱え、どちらにしても行き詰まるだろう。
 小沢の狙いは、政権をコントロール下において、自分に突きつけられた起訴から辞職への流れを断つことにある。菅が全面降伏してくれればそれでよし。でなければ自らの代表選出馬も視野に入れる。起訴を逃れる確実な方法は、首相になるか閣僚になるか。憲法の規定で首相は起訴されず、閣僚は首相の了解がなければ起訴されない。11月にも衆院が解散となり、政権が自民党に戻るような事態は小沢にとって最悪だ。
 そこで、代表選の結果がどうあれ、小沢の影響下なら、参院を過半数にするか、衆院を3分の2以上にする連立を目指すことになる。(後略)

 

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