記事(一部抜粋):2010年8月掲載

経 済

「反五味派」新興銀を抜本処理へ

【情報源】

 銀行法違反(検査忌避)容疑で、警視庁捜査2課が木村剛前会長を逮捕した日本振興銀行。今後は、破綻した商工ローン大手SFCGから同行が債権を買い取った際の年利45.7%の手数料が、出資法の上限金利に抵触するという出資法違反事件への波及に注目が集まる。すでに2課は大島健伸SFCG元社長を巨額の資産隠しや特別背任容疑で逮捕しており、振興銀とSFCGの共同正犯による出資法違反へと捜査の手が延びるかどうかが焦点。そのほか、傘下の中小企業保証機構や中小企業信販機構の銀行法、貸金業法違反、振興銀の迂回融資や見せかけ増資疑惑も取り沙汰されている。一方、SECは「傘下の上場企業の粉飾や株価操縦などの実態を解明していく」(金融庁関係者)という。
 振興銀の経営問題も気にかかる。4カ月間に及ぶ業務停止命令のダメージが大きいうえ、二重譲渡額は中核的自己資本の2倍にあたる約700億円に達する。したがって、譲渡が認められなければ振興銀は一気に債務超過へ転落する。
 同行のビジネスモデルは、ローン債権の巨大な循環取引だけに、カネが一旦止まると崩壊の危機に晒される。木村前会長は同行設立当時の金融庁長官である五味廣文氏と昵懇だった。いま次期長官の最有力候補と目される畑中龍太郎監督局長は「反五味派」で、免許取り消しなど抜本処理に踏み切る可能性が大きい。同行は決済性預金を持たないことから、ペイオフを発動しても金融システミックリスクへ波及することはない。しかし、金融庁は「ペイオフや破綻処理までは想定していない」(金融庁関係者)ようで、九月中間決算をメドにメガバンクなどへの事業譲渡後に「清算」というシナリオが有力視されている。
「諸外国を見渡しても希に見る厳しい規制」(メガバンク幹部)といわれる改正貸金業法が完全施行された。借入残高を年収の3分の1以下にするという新総量規制には利用者の約五割が抵触、500万人以上が弾き飛ばされる一方で、利用者が300万人にのぼる専業主婦も直撃を受ける。主婦の借金の理由は6割が生活維持のためで4割近くが夫に内緒だが、法改正で、夫の同意書と収入証明書の提出が義務付けられた。さらに大手消費者金融やカード会社が事務コストがかさむとして主婦向けの融資をストップすることで、主婦たちはヤミ金へ駆け込むしかない。その結果、「ヤミ金が返済のために売春を強要するケースが目立ってきた」(警察関係者)という。一方で、資金繰りに詰まった借り手をターゲットにクレジットカードのショッピング枠の現金化を悪用する新手のヤミ金業者も暗躍し始めた。これが暴力団の資金源となるのはいうまでもない。
 今回の法改正や過払い金問題の背景には、法曹界の思惑も見え隠れする。「司法制度改革で路頭に迷う弁護士が急増。そこで過払い金請求をメシの種にしようとした」(法曹関係者)。2006年の最高裁判決でグレーゾーン金利を「過払い金」と認定したことが返還訴訟ラッシュの引き金となり、いまや過払い金返還の市場規模は30兆円ともいわれ、弁護士は多額の報酬を手にしている。
 今年4月から過払い金請求者リストの信用情報センターへの登録が廃止されたが、それを逆手に取って暴利をむさぼる弁護士もいる。(後略)

 

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