記事(一部抜粋):2010年7月掲載

経 済

中国マネーの次なるターゲット

【情報源】

 日本社会の格差拡大は著しいものがあるが、実は暴力団社会の経済格差はそれを大きく上回る。暴力団新法施行から18年が経過。この間に暴力団社会ではマフィア化とともに淘汰と寡占化が進み、「いまや、それなりに資金を稼げるのは組織の上部や経済活動を手がけるごく一部」(警察関係者)。反社バッシングも相まってシノギ(資金獲得)は極めて厳しい。頻発するひったくりや車上荒らしも、多くが上納金に窮した末端の組員の仕業だという。一方で、企業舎弟は建設、不動産から金融、風俗、人材派遣、産廃処理、さらにはITベンチャーやファンドにまで進出。弁護士とも連携した合法的な経済行為で多額の資金を吸い上げている。某広域暴力団に関する警察の内部資料には、人的・資金的基盤である中核企業グループの概要と役割が詳細に綴られ、みかじめ料やバカラ賭博の実状から具体的な捜査経過まで記されている。ところが、肝心の資金提供については「実態は把握できない」との記述が目立ち、当局の捜査能力の低下ぶりが見てとれる。
 山口組6代目組長の出身母体で、構成員、準構成員合わせて約4000人の最大勢力を誇るのが「弘道会」。今年4月には地元の愛知県警が「弘道会集中取締総合対策本部」を設置、組織壊滅の狼煙を上げている。というのも、安藤隆春・警察庁長官の大号令もさることながら「山口組内部で6代目に続いて7代目も弘道会出身という前代未聞の事態が進行している」(県警関係者)からだ。弘道会は徹底した情報統制を敷き、群を抜く組織力と集金力を誇る。同会のスポンサーとしては地元金融機関から大手風俗・飲食、建設、さらには有名学習塾、大手メーカー幹部の存在まで取り沙汰されている。
 5月以降の岡本ホテル事件や大相撲の維持員席問題、大関・琴光喜の賭博問題、さらには警察庁による日本証券業協会への暴力団員約3万8000人の情報提供も、当局による「マル暴潰し」の一環だ。とはいえ、弱体化した警察が、巧妙化、多様化するアングラマネーの実態をどこまで解明できるのか。そもそも「相当数のマル暴担当が組織に取り込まれている」(事情通)のが実状で、一歩間違えば多くの返り血を浴びることになる。
 中国マネーによる日本企業買収が加速している。経営再建中のアパレル大手・レナウンは中国繊維大手の山東如意科技集団にわずか40億円で買収されることが決まり、企業再生ファンドのMKSパートナーズが手放した家電量販店のラオックスも中国大手の蘇寧電器集団の傘下に入った。産業再生機構入り後にオリックスがスポンサーとなったスポーツ用品のフェニックスは中国動向集団が買収。中堅自動車部品メーカーのオギハラも中国マネーに取り込まれ、「中小企業でも、後継者の不在や大手系列からの離脱を機に中国企業へ身売りするケースが目立ち始めている」(地銀幹部)という。中国企業の狙いは日本企業の高いモノづくり技術とブランド力。日本企業にとってもその豊富な資金力、世界最大の成長市場進出への足がかりというメリットがある。(後略)

 

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