超党派の「カジノ議連」が今秋の臨時国会で「カジノ法」の成立を目指している。法案の骨子は、国がカジノエンターテインメント(特定複合観光施設)区域を指定、地方公共団体が運営する民間事業者を選定するというもので、警察と連携して違法行為の摘発も行う。ただ、小沢一郎幹事長の陸山会事件が再燃し、鳩山政権は普天間問題で窮地に追い込まれるなど参院選を前に政局は大混乱。その煽りで、観光立国の切り札・カジノ法案の行方も混沌としてきた。
それでも財政難に苦しむ自治体は、何とか観光収入を取り込もうとカジノ開設に相次いで名乗りを上げている。2002年に石原慎太郎都知事が「台場カジノ構想」をぶち上げた東京都をはじめ、羽田とともにハブ空港を標榜する成田市、地元がラブコールを送り続ける熱海市、USJや関西国際空港の隣接地への誘致を目論む大阪府など枚挙に暇がない。亀井静香金融相は、沖縄へのカジノ特区設置を提唱している。
野村証券が候補地として取り上げたのが、長崎のハウステンボス。ハウステンボスといえば03年の破綻後、野村プリンシパル・ファイナンスがスポンサーとして再建を手がけたもののあえなく頓挫。当時は「再生は絶望的。大型の分譲住宅や老人ホーム、カジノぐらいしか利用価値はない。結局、証券会社に企業再生は無理ということ」(投資ファンド幹部)と揶揄されたものだった。その後、紆余曲折の末に大手旅行業者エイチ・アイ・エスが引き受け、辛うじて二次破綻を免れている。その野村があろうことか、ハウステンボスのカジノ進出をエイチ・アイ・エス株の買い材料として推奨しているのだから開いた口が塞がらない。
一方、産業界ではカジノ法制化を睨んで、パチスロ大手のセガサミーホールディングスやユニバーサルエンタテイメント(旧アルゼ)、ゲーム大手のコナミ、バンダイナムコホールディングスのほか、ホテル、レジャー関連企業もこの巨大ビジネスの恩恵に預かろうと蠢きだした。
ところでカジノ合法化にとってネックとなるのがパチンコ・パチスロ業界。パチンコの換金は本来、非合法だが、警察がこれまで黙認してきた経緯がある。そこで「カジノ法とセットで換金合法化のためのパチンコ法制定に踏み切る公算が大きい」(永田町関係者)という。パチンコ業界と警察の癒着ぶりはつとに知られ、今回のパチンコ法も業界の救済措置の色彩が濃い。そういえば、ユニバーサルエンタテイメントのオーナーである岡田和生氏と元警察官僚の亀井金融相は旧知の仲で、同社の40周年記念式典では亀井氏がパチンコ業界への融資を渋る銀行を恫喝、カジノ利権を意識したパフォーマンスを演じている。
カジノには様々な利権が渦巻く。違法カジノによって裏社会へ流れる資金は「東京だけでも2000億円を優に超え、海外のインターネット・カジノへも多額のカネが流出している」(事情通)といわれる。その闇金を税金として吸い上げようと目論む政府・財務省。パチンコ・パチスロメーカーから多額の献金を受け取る政治家。天下り先の確保に血道をあげる官僚。カジノ誘致合戦に奔走する地方自治体にも、政治家や官僚利権が群がる。パチンコ利権に巣食う警察は、「公営カジノを団塊世代の大量退職の受け皿として狙っている」(警察関係者)という。(後略)