(前略)
新規採用枠の半減問題は、キャリアとノンキャリアの内部抗争を激化させている。原口総務相は「?種はカットしない」と言っており、いま出ている案は、?種が2割以上カット、?種は8割カットと、圧倒的にノンキャリアに厳しい内容になっている。「最終的にノンキャリの人件費だけが大幅カットされるのではないか」「民主党の公務員制度改革はキャリア温存が優先されており改革逆行だ」などという意見もノンキャリアから出てきている。
キャリア組は、鳩山政権が末期状態になっているのを知っているから、最後屁とばかりに、やりたい放題にやっている。例えば、総務省で検討している退職管理基本方針だ。これまで秘密裏の「裏下り」とされてきたものを、一気に合法化しようとしている。具体的には、公益法人への休職出向と独立行政法人への役員出向を、官民人事交流機会の拡大という名目で掲げている。自公政権下で「天下り禁止」が強まったために、こうした脱法的「裏下り」を密かに行ってきたのだが、民主党政権下ではそれを正々堂々とやろうとしている。
そればかりか、「内下り」も制度化しようとしている。出世レースにつまずき若年退職していたキャリアが定年までいられるように「高位の専門スタッフ職」を新設するというのだ。年収一千数百万円を保証するわけで、これがキャリアの間で内下りといわれている。いずれも行き場のなくなったロートル官僚を救済する思惑が見え見えで、全省庁のキャリアがほくそ笑んでいる。
そんな中で事業仕分けが行われているわけだが、仕分け人にはぜひ、キャリア組の天下り先に天誅を下してもらいたい。今回の仕分けの目玉は、なんといっても、歴代総務省事務次官経験者がトップに天下っている「宝くじファミリー」だろう。
宝くじの売り上げは、年間1兆円。そのうち当せん金にまわるのは46%しかない。これは海外の宝くじに比べてかなり低い。残り54%のうち、40%は都道府県などに入るが、14%は「経費」に消える。銀行などの販売手数料もこの中から支払われるが、3%弱は、総務省からの天下り団体である自治総合センターと日本宝くじに上納される。特に、自治総合センターは、オフィスが山王パークタワーという一等地にあり、現理事長の二橋正弘氏は旧自治事務次官である。二橋氏の経歴を見るとすごい。自治事務次官を退官後、2001年「宝くじファミリー」の一員である自治体国際化協会理事長、2003年小泉政権の内閣官房副長官、2006年自治総合センター理事長、2007年福田政権の内閣官房副長官、2008年自治総合センター理事長に再任、となっている。自治総合センター理事長は、歴代自治事務次官の天下りポストであり、二橋氏の5代前までの自治事務次官のうち二橋氏を含めて4人がこのポストにすわっている。
二橋氏が、内閣官房副長官を退任後、2006年10月に自治総合センター理事長に天下ったとき、理事長の前任者は二橋氏の自治事務次官の前任者でもある松本英昭氏だった。いわゆる「玉突き人事」だ。その後、2007年9月に二橋氏が福田政権の内閣官房副長官に再任されると、空席になった自治総合センター理事長には再び松本英昭氏が返り咲いた。そして、二橋氏は2008年9月に副長官退任後、10月に自治総合センター理事長に再び就任している。理事長ポストは自治事務次官OBの血を絶やすことはなかった。
自治総合センターに上納されるのは、宝くじの売り上げの1%程度だが、それでも2008年度で約98億円である。それを天下り組の給料や地方自治体への「還元」に使っている。地方自治体から上納金を召し上げておきながら、還元するというのも不思議に思えるが、「上納」は国による「強制搾取」であり、その中から、お上が地方に恵んであげるという構図だ。
宝くじの発売元は、あくまで都道府県などの地方である。本来であれば、こんな上納金は不要のはずだ。首長自らの政治判断によって、自治総合センターへの上納金をやめることも、できないことではない。(後略)