経 済
止まらぬ「亀井・大塚」の暴走
郵政も貸金業界も「大変なこと」に【金融ジャーナリスト匿名座談会】
(前略)
C それでは話を国内に戻そうか。金融分野では、何といっても亀井静香・金融担当兼郵政改革担当大臣が暴れまくっている。見ていて飽きないのはいいんだけど、肝心の政策がいただけない。
A かなりいただけない(笑)。後顧を憂うことになりそうだ。まず、郵政改革がそう。改革と言っているが、正しくは改悪だ。このままいくと、日本郵政は莫大な赤字を累積させて、結局、国民負担で尻拭いということになるのではないか。
C 同感だ。まずびっくりしたのが、日本郵政の非正規社員を正社員化するという問題だ。亀井大臣は10万人とか8万人とか言っているけど、もしそれだけの人数を本当に正社員化したら、給与のアップ、社会保険負担などで、おそらく3000億円から4000億円の人件費増となる。しかしそんな膨大なコスト増は、現状の日本郵政では、とてもじゃないが吸収できない。いったいどうするんだろう。
B 亀井氏は「日本郵政の齋藤次郎社長も賛成している」と言うけど、当の齋藤社長はこのところ表舞台に姿をみせなくなっている。定例記者会見も開かれないままだ。会見すれば、正社員化の問題を質問され、何かしら答えなければならない。それはマズいというので逃げの一手を打っているのだろう。
A 亀井氏も大塚耕平副大臣も、郵政見直しの詳細部分の話になると、「それは経営側が決めること」と、これまた逃げている。そうした日本郵政に関する諸々の疑問をすべて問い質されたら堪らない、という気持ちが齋藤社長にはあるとみて間違いないね。
B つい最近、郵便局の人たちと話す機会があったんだけど、ある郵便局長がボヤいていたよ。正社員化の話が出てから、非正規の人たちの仕事ぶりが鈍くなったそうだ。
C 非正規社員には、日ごろの仕事ぶりと、年一回の試験によって正社員への道が開かれる。だから正社員になりたい人は普段からがんばっている。誰もが正社員になれるとなれば、日ごろの緊張感が薄れるのは仕方がない。それが人間だよ。
B まあ、正社員化に反対している人の話だから、割り引かなければいけないけど、確かにそういうことが起きても不思議ではない。残念だけどね。
A それはそうと、日本郵政、郵貯銀行、簡保生命の株式上場問題についてはどう思う? 何だか雲行きが随分怪しくなった感じがするんだけど。
C 確かに、政府にも、亀井氏にも、株式上場への熱意が感じられないね。郵政改革関連法案に付随して上場スケジュールが示されてもいいはずなのに、そういう話がまったく聞かれない。
A 政府、つまり株を100%保有している絶対的大株主が、その企業に対して、いついつまでに上場してほしいと要望を出さないのは、考えてみれば奇妙な話だよ。
B 大塚副大臣は「上場は日本郵政の経営側が決めるもの」と言っているが、これはおかしい。株式上場に堪えられる財務状況、企業態勢になるのはいつか、実際に上場するのはいつ頃になりそうか、そういったことは法案成立の前後に、経営側からきっちりコミットメントを取っておくべきだ。でなければ株主として失格だ。政府を代理人にしている国民に対しての義務を怠っているということだ。
A まったく怠慢のそしりは免れないね。
C というより、本気で株式を上場させる気がないのではないか。あれば、スケジュールくらいは立てるだろう。おそらく上場は口先だけの話で、上場できなくても構わないと考えている。
A それは図星だろう。しかし上場しないと、株式を売却できない。売却できないと、国にも、日本郵政にもおカネが入ってこない。特に郵貯銀行、簡保生命の株式売却益があるかないかは、日本郵政にとってきわめて重大な問題だ。今後、絶対に必要となるシステム投資の資金などをどこから捻出するのか。
B それなのに、株式上場問題が軽視されているのはなぜだろう。
A やはり「実質国有化」というのが亀井氏たちの狙いだからだろう。今回の郵政見直しをみても、採算意識が異常に乏しくなっているのが分かる。最終的には第2の国鉄のようになって、その累積損失を国民が負担することになりかねない。
C 一方、金融問題では貸金業法が大詰めだ。これも酷い状況になっている。
A 民主党の中では、貸金業法の完全施行に反対する声がかなり大きくなっている。亀井氏の意を受けた大塚氏は、完全施行に向けて走っているが、与党政策会議では、壇上の大塚氏が、続出する反対意見の中で立ち往生する場面もあった。そこで大塚氏は、収拾策として「完全施行はするものの、借り手の年収の3分の1を上限とする総量規制の例外措置を設ける」ことで最終調整しようとしている。しかしその内容がかなり劣悪だ。率直に言って、政策効果がまったく期待できない。
B 複数の貸金業者から借り入れている債務者が、1社1本の借り入れに借金をまとめて、返済期間を長期化し、毎月の借入金利を低くするという案だろう。確かに笑ってしまうね。現実問題として、そんなことはできるはずがない。貸し手側には何のメリットもないし、最終的に返済不能になるのは目に見えている。問題の先送りというのが本質で、完全施行にこだわる亀井氏の指示に従うために、方便として苦し紛れの装飾を施したということではないか。(後略)