記事(一部抜粋):2010年4月掲載

連 載

【狙われるシルバー世代】山岡俊介

クロマグロに沈没船引き揚げ、高齢者を騙す投資詐欺の手口

 相変わらず、高齢者を狙った投資詐欺が後を絶たない。今回は、事件化が必至と思われる二つの投資話をキャッチしたので報告したい。
 一つは、クロマグロの養殖のための資金と称して社債を販売する「シールドジャパン」(鹿児島市)なる会社。昨年7〜8月にかけて投資を募り、4億1300万円を集めた。
 社債は1口100万円から2000万円まで各種あり、高額のものほど償還期は長く(100万円の2年に対し2000万円は5年)、その分、年利も高い(100万円が9%に対し2000万円は20%)。100万円の社債には2年間で18万円の利息がつくが、2000万円の場合は5年後に利息と元本合わせて4000万円が戻ってくるという触れ込みだ。
 シールドの最大の売りは、「出資金は安全の全額償還(満期後)」とパンフレットで堂々と謳っている点だろう。
「なぜこれほどの高配当が可能かと聞くと、クロマグロは年々漁獲量が減っており、一方で、消費量は世界的なヘルシー志向で増えている。高騰が間違いないからだというのです」(投資家)
 ところがシールドの関係者はこう本音を漏らす。
「償還が『満期後』というのがミソ。満期になるまで顧客の解約要求には一切応じない。満期前に経営破綻したら、顧客は丸損です」
 シールドの中村浩一郎社長は昨年、ある経済雑誌のインタビューで、自らの中国人脈の太さを誇り、マカオの裕福層に高級クロマグロを高値で売るとぶち上げている。しかし同関係者によれば、その記事は実際には「広告」。また、中村氏は中国の「北京首都経済貿易大学」の客員教授という肩書きをもっているが、それもカネで買ったものだという。
 しかも掲載記事をよく見ると、肝心のクロマグロの養殖事業はあくまで「計画」にすぎず、M&Aするという会社名も明らかにされていない。
 同関係者によれば、同社にはまったくというほど事業実績はないが、募集パンフレットに「全額償還」を明記したことで、人のいいお年寄りが騙されるという。
「会社には営業マンすらほとんどおらず、販売は代理店任せ。それでも投資額の3割を手数料として支払うといわれれば、彼らも本気でやる。特に名古屋地区の代理店は女性が主体で、資産家老人、独居老人を中心に色仕掛けで販売を伸ばしたと聞いている」
 ここで驚くべき事実を述べよう。シールドの東京本社営業部「本部長」の肩書きをもつH・Y氏。問題の社債販売の重責を担う人物といっていいのだが、このH氏には凶悪犯罪の前科があった。
 告発者によれば、H氏は女性に対する恐喝・暴行・詐欺容疑で大阪府警に逮捕され、懲役3年執行猶予5年の有罪判決を受けているという(現在も執行猶予期間中)。
 その被害者女性は、刑事告訴と並行して民事訴訟を提起。大阪地裁は女性の主張通り、慰謝料を含めた満額2200万円の支払いを命じているが、その訴状(07年8月)にはこんな記述がある(一部抜粋、要約)。
《原告(女性)の金が底をついたので、被告は原告の両親などから金員を詐取しようと企て、「親には娘が会社の金を使い込んで迷惑をかけていて、と言えば金を出す。こういって取れるだけ取ってこい」「(親に)貯金がないなら金融屋にいかせろ」「自分にはヤクザの知り合いがいて、そいつが親に直接取りに行こうと言っているのを俺が押さえているんだ」などと申し向け、これに従わなければどんな暴力を振るわれるかも知れないと畏怖させ……》《原告が畏怖した状態が続いていたところ、更に被告は「これだけでは足らない。実家が持ち家なら担保に入れて金を作ってこい。親の権利証を盗んででも出してこい」と原告に申し向け……》《被告は夜中に原告のマンションに押しかけてきて、原告宅に土足で侵入し、原告を殴ったり蹴ったり、唾を吐きかけたりなどの暴力をふるい原告を畏怖させ、手渡しの形で被告は金五〇万円を喝取した》《被告は以上合計六一〇万円四八〇七円を原告から喝取し、原告に同額の損害を与えた》
 当時、H氏は貴金属の販売を手がけ、二束三文の宝石を高額で売りつけていた。原告女性は、その支払い拒否した結果、このような目にあったという。(後略)

 

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