記事(一部抜粋):2010年4月掲載

経 済

金融庁「無能行政」のツケ

 貸金業者の倒産続出、銀行にも飛び火【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)
A そういえば1カ月ほど前、金融庁では、政務三役が若手官僚をねぎらう懇親会が開かれた。夕方、会議室パーティーをやったわけだ。なんとカラオケセットまで持ち込まれ、亀井氏と大塚氏、そして三国谷勝範・金融庁長官が、それぞれ一曲披露したらしい。
B 金融庁は、休憩室での職員の不倫が発覚したばかりだろうに。なんとも緩みきっている。懇親会はいいとしても、経済がこれほど大変な状況下で、しかも重要法案が目白押しの国会会期中にカラオケはないだうろう。
A 大手マスコミの記者たちも招待されたようだが、参加した一人は「これはまずい」と思って、途中で帰ったそうだ。それが常識というものだろう。
C 金融庁ではいま、改正貸金業法の完全施行を6月に控えて、本当に完全施行するのかどうかが問われている。貸金業法の影響で、資金繰りができない貸金業者が倒産したり、おカネを借りたくても借りることのできない人たちが続出している。そうした中で、政策を決定する者たちがカラオケパーティーとは呆れてしまう。
A 呆れるというより怒りを感じるね。
B 貸金業法については、昨年11月以降、「貸金業制度に関するプロジェクトチーム」が実態調査という名目で、貸金業法の見直しを行うかどうかを議論してきた。プロジェクトチームの座長は大塚氏、事務局長は田村氏。そのほか、消費者担当副大臣の大島敦氏、同政務官の泉健太氏、法務大臣政務官の中村哲治氏という面々だ。
C この間、専門家などを呼んでヒアリングを続けていたよね。何をダラダラやっているのかと思っていたけど、今はその5人が雁首揃えて話し合いを続けている。
A 結局、業界などが期待していた総量規制の延期、見直しは行われず、政令をちょっといじる程度で終わる見通しだ。そんなことなら、半年も時間を空費しなくてよかったのにと思うよ。
B この会合で配られた資料は非公開だけど、入手することができた。それをみると、《総量規制を超過した者の借入残高を段階的に減らしていくための借り換えの推進》とあって、その下に《総量規制の導入により、総量規制に抵触する者は借り換えが不可能になり、返済が困難となるおそれ》と書かれている。さらには《総量規制の上限に超過している借り手が、段階的に借り入れ残高を減らすことが可能になるよう、段階的な返済のための借り換えを総量規制の例外とする旨の府令改正を行う》となっている。
A なんだか意味がよく分からないんだけど(笑)。そんな回りくどい表現をするならば、いっそのこと総量規制を延期すればいいのに。
C 完全施行後には、その「例外」とやらが続出するのではないか。しかし、分かったような分からないような意味不明の文章だね。半年を費やしてこの程度か。
A 要するに、改正貸金業法については、亀井大臣が「完全施行を予定通りに行う」と明言している以上、小物の大塚副大臣や田村政務官あたりにはどうすることもできないということだ。それで、貸金業法の完全施行までに私たちはいろいろと努力して考え続けたというジェスチャーをするしかなくて、そんな資料をつくったのだろう。
C 完全施行で、貸し手の倒産、借り手の自己破産など様々な問題が発生したときに、「私たちは一生懸命にやったのです」と責任逃れするためというわけか。
B おそらく、そんなところだろう。先ほどの資料のなかで、最も笑ってしまったのは「改正貸金業法等の広報活動」という項目だ。《改正貸金業法については、その内容についての認知度が低く、このまま完全施行が行われると、大きな混乱が生じる可能性があるとの指摘》としたうえで、《改正貸金業法の認知度の向上を図るため、ポスターや金融庁ホームページ当を通じて、広報活動を強化》とある。なんだか、おかしくないか(笑)。
C かなりおかしい。何をいまさらという感じだね。半年も検討してきた結論のひとつがこれか、と言いたくなる。
B この法律は確かに認知度が低い。総量規制のために必要となる借り手の年収証明の提供にも貸金業者は苦労している。しかし、そんなことはとうに分かっていたことだ。完全施行は6月で、残すところ2カ月強しかない。それなのに、いまさらポスター張りか。金融庁のホームページを一般の人たちが見ると思っているのも愚かだね。政治家5人が真顔で、この資料を手にしながら、ああだこうだと議論しているとしたら、滑稽だしお寒い限りだ。(後略)

 

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