記事(一部抜粋):2010年3月掲載

経 済

新生銀行「無能経営」のツケ

 公的資金を入れそびれた金融庁【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)
A 心配されている大手銀行の筆頭に上げられるのは、やはり、新生銀行だろう。前社長のティアリー・ポルテ氏の無能ぶりはいうに及ばず、再び社長に返り咲いた八城政基氏の経営も失敗だったといわざるをえない。
B シティバンクでリテールビジネスを成功させたという評価になっているが、結局、八城氏がやったことは消費者金融ビジネスだけ。しかし、そのシティの消費者金融はいまやガタガタだし、新生銀の路線も完全に行き詰まった。もちろん、そこには、改正貸金業法による金利規制や総量規制、そして、最高裁判決を契機にした過払利息返還の増大という不運もある。
A しかし銀行の名の下で、消費者金融に経営資源を集中させたのは異常というほかはない。言ってみれば、銀行経営者としては、素人の域を出ないということだ。
C 実際、素人だろう。優れた銀行経営者というイメージは虚像にすぎないと思うよ。
A しかし、八城氏の消費者金融好きは変わらない。昨年前半には、消費者金融はすでに大変な状況にあったのに、そうした中で一時、アイフルへの出資を考えていた。
B それは驚きだ。しかし、手っ取り早く利益を稼ぎだせるビジネスとしては、それしか思いつかなかったのだろう。企業金融の土台は、ポルテ時代に崩壊してしまったからね。
C しかしポルテ時代はひどかった。公的資金の注入を受けているにもかかわらず、中小企業金融から実質的に撤退し、国内では不動産関連に集中、海外ではハイリスク投資にのめりこんだ。マネジメントも崩壊したしね。
B 日本の銀行経営の歴史のなかで、無能トップはポルテ氏。短期間で最も高給を得たのもポルテ氏だろう。政府は、株主として、ポルテ氏からその高給を返還してもらうべきだと思うよ。
A 無能トップかどうかはともかく(笑)、ポルテ時代の経営失敗がたたって、あおぞら銀行との合併という話になった。しかし、それも風前の灯。困ったものだ。
B 2009年度の第3四半期決算は黒字だったが。通期決算では大赤字が間違いない。昨年末に始まって、今年になって終了した金融庁の検査で厳しく資産査定されたからね。特に投資銀行部門のノンリコースローンは貸倒引当金を大幅に積み増すことになる。
C 大赤字となれば、中間的自己資本が大きく減少する。自己資本比率は8%を大きく割り込むに違いない。過小資本の問題銀行になる。
A そこで、新生銀行が今やっているのが投融資の回収だ。回収できるものはどんどん回収している。そして、回収した資金で国債を買っているらしい。
C 民間向けの投融資は自己資本比率規制上のリスクウェートが高い。ましてや、バーゼル?と呼ばれる現在の自己資本比率規制の場合、投融資先の信用リスクに応じて、リスクウェートが高くなるから、新生銀行が従来行ってきた投融資資産のリスクウエートはかなり高くならざるを得ない。リスクウエートが高いと、それだけ自己資本比率規制上の資産(リスクアセット)が膨張して、自己資本比率を大きく引き下げることになる。
B つまり、自己資本比率かさ上げのために、投融資を回収して、国債に乗り換えているというわけか。国債はリスクウエートゼロだから、リスクアセットにならないからね。
C しかし、それでも十分ではないだろう。自己資本比率を8%以上にするためには、資産対策だけでは不十分のはずだ。
A その通り。だから今年度中の増資を検討している。しかし、誰が増資を引き受けるのか。普通の投資家が新生銀行に出資したがるとは思えない。
B 結局、新生銀行のオーナーである米系ファンドのJCフラワーズとその仲間たちが引き受けるしかないだろうね。
C しかし、それを金融庁は許すだろうか。
A 過小資本銀行になってマーケットに叩かれ、混乱要因になるよりはマシということではないか。そもそも、金融庁は、あおぞら銀行との合併を強力に後押しして、その際には公的資金を注入しようと模索していた。国の出資比率を高めて、一挙にJCフラワーズの影響力を殺ぎ、新生銀行に入り込んだ外国人経営陣を一掃しようと目論んでいた。その意味では、合併が破談になっても、単独の新生銀行に公的資金をさらに注ぎ込むという可能性がないわけではない。しかし、それでは理屈が立たなくなる。(後略)

 

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