(前略)安倍内閣が憲法改正のための国民投票法案を出した際、民主党は投票年令を18歳に引き下げるよう、かなり強引に要求した。その理由は定かでないが、民主党のマニフェストとの関係でいえば「成人年令」「高校の無償化」などとこれをリンクさせることが、一つの突破口になる。
世界では90%以上の国が成人年齢を18歳としており、投票権も18歳からが圧倒的に多い。肉体的にも18歳成人というのは納得できるだろう。
しかし日本では、反対意見の方が多数である。今の18歳はとても成人とは言えないというのがその理由だ。しかし、それを言ったら20歳も25歳も似たようなものだろう。大切なのは、18歳で高校を出るまでに立派な社会人を育てるのだ、という意志と気概を持って教育制度を大幅に変えることである。
幸い、民主党は高校までの授業料の無償化を提案している。しかしより本質的な提案は、高校の義務教育化である。それによって初めて授業料の無償化が意味を持つ。でなければ単なるバラ捲きだ。
義務教育の責任を負うのは、前回述べた基礎自治体だ。社会人として立派に通用するための教育を、高校卒業までに責任をもって行う。そのためには今の受験重視の知識詰め込み教育をやめ、社会人としての責任、自覚、能力などを12年かけて身につけさせる。大学は、より高度な知識と技能、稼ぐ力をつけるための場所となる。
立派な社会人を育てるには、地球環境、家族、カネ、社会、人生設計、社会人としての道徳、日本と世界、ディバーシティなどに関しての広範なカリキュラムが必要だ。教える方も教師ばかりではなく、ボランティアの企業人やプロフェッショナルが多数必要になる。親、店主、警察官、消防士、介護士、医者などにも、社会貢献の一つとして教育の現場で活躍してもらわなくてはならない。
高校を卒業する時には、社会人としての責任を自覚して権利を行使する、また義務を全うする、などの誓約をさせたうえで「社会人カード」(全ての行政サービスに共通の背番号)を交付する。それが運転免許、パスポート、年金カード、健康保険などを兼ねる。もちろん投票でもこのIDが使われる。
義務教育を終了した一八歳の成人は投票、飲酒、喫煙、運転、婚姻、借金など全ての社会人に与えられる権利を付与される反面、納税、刑罰などの責任も負う。
今までの日本では投票、飲酒、喫煙は、成人してからということで20歳であった。しかし、バイクは16歳、自動車は18歳で免許が取れた。だから、動く凶器で事故を起こしても社会的な責任を追及できない。
国民投票の投票権は18歳となったが、なぜ他の選挙権と異なるのか、国民に詳しい説明はなかった。自民党が法案を通すために民主党の言い分を飲み込んだだけだ。
こうした矛盾を全て解決し、また今の義務教育が中学(15歳)までなのに高校の授業料も無料にする、という政策にも正当性を与えるのが、「18歳成人」と「高校の義務教育化」なのである(後略)