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それでも、吉野家も含めた大株主が「どん」を見限るのではないのか、との観測が絶えないのは、先の「継続企業の前提に関する事項」だけでなく、吉野家HLDを取り巻く環境が激変しているためだ。
吉野家HLDは09年8月中間期の連結決算で最終損益は3億9100万円の赤字となった。10年2月通期の予想も13億円の最終赤字だが、実質無借金経営の同社にとって、屋台骨が揺らぐよほどの赤字幅ではない。
しかし問題は、相次ぐ企業買収によって進めた「多角化」がうまくいかず、総崩れとなっている現実だ。07年にラーメン事業に乗り出したかと思えば、採算には程遠く、09年8月には撤退。「京樽」の社長に送り込んだ田中常泰氏も、再建を果たせず10年1月には会長に退く。「吉野家出身者では不振企業を立て直せないことを露呈してしまった」(外食幹部)。
吉野家の事業分野には、主力の牛丼のほかに、京樽のすし、どんのステーキ、「はなまる」のうどん、「ピーターパンモコ」のスナック(たい焼き、たこ焼き)などがある。だが既存店の売上高が増加したのはうどん部門だけ。営業損益では、スナック分野が4400万円の黒字だが、減益傾向にあって赤字転落の可能性もある。
それを支えるはずの牛丼分野も、売り上げの減少が止まらない。09年3―8月期の既存店売上高は前年同期比で4%減。営業利益は42%も減少した。下期はさらに悪化する怖れがあり、10月の既存店売上高は前年の89.4%にとどまった。
そんな吉野家グループの窮状を待っていましたとばかりに、12月から、ライバルの「すき家」が牛丼並盛を280円、「松屋」は320円に値下げして攻勢をかけている。吉野家が380円を固執するなら、顧客基盤を崩される可能性がある。
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