記事(一部抜粋):2010年1月掲載

経 済

どうなる「日本振興銀行」

異例に長い金融庁検査、裁判も敗色濃厚【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)
A そうしたマクロ環境のなかで、金融業はどうなっていくのだろうか。
C まずいえるのは、ある時点から不良債権が増大してくる。これは間違いない。
B 確かに増大するだろうね。しかも、不動産価格はまだ下がる。特に商業用不動産がね。商業用不動産の証券化資産は10年1〜3月期に大量の償還を迎える。しかし、発行体は償還資金を捻出できない。だから、不動産が投げ売りされる。それで不動産価格は一段と下がる。担保不動産の減価が進むので、銀行は貸倒引当金の積み増しやノンリコースローンの損失処理に追われることになる。
C 投資資金を豊富に持っている海外の不動産ファンドがこの間、あまり動かなかったのは10年に発生するだろう事態を見越しているからだ。つまり、彼らが出動するくらいまでに不動産価格は数段下げるということだ。オフィスビル業者なども苦しい立場になる。
B しかし、商業用不動産の証券化資産が大量償還されるという話は年末まで、あまり騒がれなかったね。なんでだろう あまりに怖い話なので口にできなかったのさ(笑)。
B まあ、怖い話ではあるのは確かだけど。
C とにかく、2月から3月にかけて、いわゆる二番底が始まる可能性が高い。いずれ、夕刊紙などが「2月危機」という見出しを立てて、騒ぎ出すだろう。
(中略)
A そんな日本振興銀行が09年に再び話題になったのは、倒産した商工ローンのSFCGとの関連だった。振興銀行は、消費者金融会社などからローン債権を買いまくっていて、SFCGからも大量に買っていた。しかし、それらのローン債権の多くは、すでにSFCGが資金調達の一環として証券化したもので、SFCGの倒産によって、ローン債権の二重譲渡が明らかになった。
C 債権譲渡の場合、第三者対抗要件は最初に譲渡登記した者に発生する。二重譲渡債権のほとんどは、証券化が先に行われていたから、第三者対抗要件は証券化のために譲渡登記した信託銀行にあるというのが一般的な法的解釈だ。
A つまり、振興銀行の持つ譲受債権には第三者対抗要件がなく、その債権から得ていた利益は不当利益になりかねないというわけだ。
B ところが、振興銀行は自らの正当性を主張して譲らず、業を煮やした信託銀行は法的解決を目指して裁判に訴えた。いま法廷で、振興銀行は証券化の債権譲渡は単なる包括担保譲渡にすぎず、信託銀行側の主張はおかしいと主張しているが、法律の専門家たちにいわせると、振興銀行の主張に正当性は乏しいそうだ。
C おそらく、振興銀行は地裁で負けても上告するだろう。そうしないと二重譲渡債権を処理しなければならなくなる。
A 二重譲渡の金額は700億円から800億円に達するとみられている。それをすべて処理して、さらにいままでに利息収入として計上した利益を不当利益として損失計上しな直すと、一挙に振興銀行の自己資本は吹き飛ぶだろう。
B 最終決着がつかなくても、裁判の論争で不利になれば、訴訟損失引当金を積むのが筋だ。想定される損失額の半分程度の引当金を積む。その場合も、振興銀行の自己資本が大幅に毀損する。経営危機につながりかねない。
C 日本振興銀行もSFCGに騙された被害者という立場だとすれば、SFCGと、同社のオーナーだった大島健伸氏に賠償金を請求すればいい。
A もちろんそうだが、賠償金は請求すればすぐに出るわけではない。
B 金融庁は09年5月、振興銀行の検査に入った。通常、あの程度の中小銀行であれば、検査は1カ月程度で終わる。ところが、09年中に終わらなかった。実に8カ月も検査が続いている。過去に、こんな話は聞いたことがない。
C 金融庁の関係者が言っていたが、金融庁は相当に困っているらしい。い。検査を終了してしまうと、何らかの結論を下さなくてはならないが、そうすると金融庁の責任問題に発展するかもしれない。だから、検査を終えることができなくなっているというわけだ。検査官たちは、何度も何度も二重譲渡の対象となったローン債権の資料をチェックしているそうだよ。それしかやることないから(笑)。
A 要するに、金融庁は「イベント待ち」になっているということだな。自分たちが断を下すこのは避けたいので、外部要因で「何か」が発生するのを待っている。
B それは裁判の成り行きということだろう。
C 振興銀行は09年9月中間決算では訴訟損失引当金を積まずに、黒字決算を発表した。しかし10年3月期はどうだろう。厳格な監査法人であれば、引当金計上を求める可能性がある。
A 振興銀行をめぐっては、関連の「中小企業振興グループ」もなんだか胡散臭い存在だね。経営危機に陥ったNISグループやベンチャーリンクなどを買収してグループ化しているが、NISもベンチャーリンクも経営内容は悪い。そこにグループ内の資金で出資したりしているが、どうも、グループ内で資金循環しているようにみえる。(後略)

 

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