記事(一部抜粋):2009年12月掲載

経 済

「亀井」と「新BIS」に揺れる金融界

【情報源】

(前略)
 それよりも金融関係者が恐れているのが、国民新党がマニフェストに掲げた「BIS規制」「時価会計」「ペイオフ」、そして「大証の日経225先物取引」の凍結・廃止。時代錯誤も甚だしいこの政策が罷り通るとは到底思えないが、海千山千の亀井氏は、「アドバルーンをぶち上げて、またしても存在感のアピールを企んでいる」(永田町関係者)という。実際、亀井氏は11月初めに突然、地域金融機関の自己資本比率四%割れを容認、物議をかもしている。
 メーンバンクとしてアイフル、CSK、オリックスなど大型問題案件を抱える住友信託銀行が、ようやく中央三井トラストHDとの合併を決め、金融再編の最終幕がこじ開けられた。再編のキーワードは「新BIS規制」。優先株などが中核的自己資本として認められない公算が大きく、そうなれば邦銀の自己資本は一気に劣化する。今後の注目はメガバンクでは収益基盤が弱いみずほFG、中小金融機関では公的資金注入や事実上の身売りに絡んでK行、T行、M行などが取り沙汰されている。
 りそなHDからも目が離せない。2兆円もの公的資金の返済は極めて厳しく、そこで再燃しているのがグループの再編計画。たとえば「りそな傘下の近畿大阪と大阪のりそな銀行を合体させ、一方で埼玉りそな銀行を核として上場させる」(メガバンク幹部)という東西分割構想である。また、りそなが再編から落ちこぼれた第二地銀などの受け皿になるとの見方もある。
 金融庁検査が異例の半年にも及んでいる日本振興銀行の行方にも関心が集まっている。というのも、同行の木村剛会長と竹中平蔵元金融担当相との蜜月関係はつとに知られ、竹中氏といえば亀井氏の天敵だからだ。同行は過去に情実融資疑惑が取り沙汰され、最近では倒産した商工ローン最大手SFCGから買い取った700億円のローン債権を巡って「二重譲渡疑惑」が浮上、訴訟に発展している。仮にその債権が不良化すれば一気に債務超過へ転落、破綻の危機に晒される。巷では「ペイオフ第1号」とさえ囁かれはじめた。本業を忘れ「債権転がし」で延命を続ける日本振興銀行に対し、亀井・金融庁はどのような判断を下すのか。
 1400億円の都税を注ぎ込み、1000億円もの累損を抱える新銀行東京の雲行きも怪しくなってきた。自力再建が困難なのは誰の目にも明らかで、民主党は「撤退」を公約に掲げている。肝心の石原慎太郎都知事は、五輪招致の失敗、難航する築地市場移転問題に加えて都議会が民主党一色となっただけに、「本人は否定しているが、国会議員の時のようにあっさりと職を投げ出しかねない」(大手紙デスク)。その場合、新銀行東京の受け皿として囁かれているのがまたしてもオリックス。しかしオリックスこそ「小泉改革」の象徴だけに、スンナリと事は運びそうにない。
 改正貸金業法と過払い金返還請求ラッシュで瀕死の消費者金融業界も、いよいよ最終ステージを迎えようとしている。最大手のアイフルが、事業再生ADRを活用して約2800億円の返済猶予を要請。銀行団としては「法的整理によるロスより、私的整理のADRの方が損失は限定的」(取引行幹部)とあって、年内にも合意に至る公算が大きい。ただ、「将来的には事業譲渡、清算処理の可能性もある」(金融関係者)。今後の焦点は、転換社債のモラトリアムを要請する武富士。(後略)

 

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