記事(一部抜粋):2009年12月掲載

政 治

民主党の大チョンボ

「仕分け人」は財務省の走狗【霞が関コンフィデンシャル】

(前略)
 この国会法改正などの「第一歩」ができていないために、例えば、国家戦略相の菅直人や仙谷が、政治主導の運営を目指し、従来なら官僚が就いていた「事務局長」や「次長」といったポストに民主党議員をつけようとしても、法律上できない状態になっている。「財務官僚の占拠」は、いわば、国会法の制約で生じている間隙を縫って財務官僚が入り込んできたともいえる。
 11月10日、みんなの党衆院議員・柿澤未途の質問に対して、政府は「行政刷新会議は、内閣府設置法(平成11年法律第89号)に基づく行政組織ではなく、その役職等は官職に当たる者でないことから、行政刷新会議の議員またはワーキンググループの評価者としての発令は行っていない」と回答している。
 これで明らかだろう。一見、権勢をふるっているようにみえる行政刷新会議のワーキンググループの評価者(=仕分け人)には一切の権限がないのだ。一方、財務省役人には法律上の予算査定の権限がある。ということは「仕分け人」は、財務省役人の走狗として「事業仕分け」を行っているのだ。
 鳩山政権の目玉政策として来年度予算の無駄削減に取り組む事業仕分けが公開で行われ、マスコミは連日大きく報道したが、責任のはっきりしない仕分け人が裁く姿は、まさしく「現代の魔女狩り」だ。事業を否定される独立行政法人や所管官庁の人間はたまったものではないだろう。それなら、いっそのこと、財務省役人と予算要求官庁の役人がやり合うのを公開した方がいい。そのほうが、責任の所在がはっきりしているだけましだ。
(中略)
 そもそも、事業仕分けの対象となった基準も曖昧だ。また、仕分けの基準も不明確だ。さらに、仕分け結果の説明責任の所在も明らかでない。これでは国民は納得できない。
 例えば仕分けの基準で、民主党のマニフェストを使うというのは、国民にわかりやすい話であるが、それすら整合性が保たれていない。
 11月13日の事業仕分けで、2011年7月の地上デジタル放送完全移行に向けた総務省の支援事業(概算要求307億円)を「半減」としたことだ。 
 マニフェストには、地デジへの円滑な移行として、《安価なチューナーの開発促進および経済的弱者に対するチューナーの購入支援など必要な環境整備・支援を行う》と公約されている。そこで、9月末のチューナー普及率は69%と目標の72%に達しなかったために、総務省は09年度当初予算額の2倍を概算要求した。しかし、事業仕分けでは要求が半減され、前年度当初予算通りになった。これでは、財務省の例年行う査定と同じ「前年同」というもので、行政刷新会議ワーキンググループが財務省の手下となっているのと変わりないし、民主党の公約にも反してしまう。
 こういう指摘だけでは芸がないので、とっておきの奥の手を紹介しよう。それは、やはりマニフェストにある「電波の有効利用」である。そこには《オークション制度を導入することも含めた周波数割当制度の抜本的見直しなどを行います》との公約がある。これまで総務省は電波を割り当てるという前時代的な政策をとってきたが、「周波数オークション」という世界標準の政策になる。しかも、地デジ移行で空いた周波数帯をオークションにかければ、1兆円以上の収入になり、地デジ移行予算307億円をまかなうばかりかおつりもくる。
 ちなみに今年6月、米国でも地デジに移行したが、オークションを行い1300億円を捻出し、一家に2台分のテレビチューナー代を補助した。
 周波数オークションはテレビ業界の既得権を奪うので、テレビでは絶対に報道しない。(後略)

 

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