記事(一部抜粋):2009年11月掲載

経 済

コンビニ業界は訴訟ラッシュの予感

本当の激震はこれから【業界最新地図】

(前略)
 しかしセブン‐イレブンをはじめとするコンビニ本部各社は、見切り販売をこれまで認めてこなかった。現場の加盟店が見切りを行うと、店鋪指導員が飛んでいって「オーナーさん、何をやっているんですか。やめてください」と有無をいわせずやめさせた。
 本部とオーナーが交わすFC契約書には、店頭で販売する商品の価格はオーナーが決定権があると明記されている。見切り販売の制限は明らかに契約違反である。
 ところがセブン‐イレブンは、「見切りをしない他のオーナーに迷惑がかかる。チェーン全体の営業戦略上好ましくない」と頑に見切りを拒んできた。公取委の裁定が下った今も、「新鮮な商品を売っているというイメージが損なわれる」として、見切りはすべきでないという立場を崩さない。
 しかしこれは詭弁だ。見切りをすると新鮮イメージが損なわれるというのは、見方を変えれば、「消費期限の迫った鮮度の落ちた商品(価値が低下した商品)を、あえて定価で売り続けることで、それがあたかも新鮮であるかのように消費者に誤解させる」のが、セブン‐イレブンのイメージ戦略ということだ。
 これに対し見切りは、値段を下げることで、鮮度の落ちた商品の価値が下がったことを正直に伝え、客に納得ずくで買ってもらう行為だ。消費期限ぎりぎりの商品を、そうとは知らせず新鮮なイメージを装って定価で売るのと、どちらが消費者本意の姿勢であるかは明らかだろう。
 セブン‐イレブンが見切り販売に反対するのは、それを認めてしまうと、加盟店側の収支が改善する一方、本部が得られるロイヤルティが減少する可能性があるからだ。
 実はコンビニの特殊な会計システムでは、商品が売れ残ってゴミになったほうが、半額で売り切られるより、本部がロイヤルティを多く徴収できる仕組みになっている。加盟店に多くのゴミを出させるほうが、なんと本部にとっては都合がいいのである。
 公取委はそのカラクリを十分承知したうえで、排除措置命令を下した。公取委がお墨付きを与えたたことで、見切り販売は燎原の火のごとく全国に広がるかと思われたが、実際には大多数のオーナーが見切りに踏み出さずにいる。「売価変更の手続きが面倒」「思ったほどには収支が改善しない」など様々な理由があげられているが、あるオーナーは「要するに本部に睨まれたくないからです」と本音を明かす。
 公取委の命令後も、本部は様々な伝達手段で、「見切りで加盟店の経営が改善するとは限らない」というメッセージをオーナーたちに伝えている。そうした中、本部にとって目の上のタンコブとなっているのが、前述の「コンビニ加盟店ユニオン」だ。
 ユニオンの中心メンバーの中には、早くから見切り販売を実行し、本部の妨害にも負けずに継続してきたオーナーが複数いる。ユニオン=見切り推奨団体ではない(本部と共存共栄を目指して話し合う団体と位置づけられている)が、本部からすると、「今日の事態を招いた元凶」としか映らない。
 公取委の命令が出た当初、セブン‐イレブンの井阪隆一社長は「ユニオンと話し合っていくつもり」とメディアのインタビューに答えていたが、徐々に態度を硬化させ、「今はまったく話し合うつもりはない」(関係者)という。
 そうした中、セブン‐イレブンの加盟店オーナー(全国に約1万2000店鋪)の中には、ユニオンに反発する者も現れた。
 セブン‐イレブンの創立20周年記念として1993年に設立された「セブン‐イレブンみどりの基金」は、本部役員とオーナーの代表によって運営され、29人の理事・幹事のうち16人を加盟店オーナーが占める。理事長は一号店(東京・豊洲店)のオーナーだ。
 その「みどりの基金」が、10月、全国のオーナーに対し、ユニオンと一線を画すよう署名を求める書簡を送るという行動に出た。ユニオンの活動が「セブン‐イレブンのイメージダウンににつながっている」というのがその理由である。
「基金」の行動は、セブン‐イレブン本部とは関係なく、理事・監事を構成するオーナーたちが自発的に行ったこととされている。いわば本部と親密なオーナーが、ユニオンの排除に動いたという構図。「共存共栄のための話し合い」を標榜するユニオンを、本部への不満分子と決めつけ、大多数のオーナーはそれに迷惑しているというわけだ。
 一号店のオーナーは、NHK「プロジェクトX」などでは、セブン草創期に鈴木敏文氏(セブン&アイ・ホールディングス会長)らと苦労を共にし、経営を軌道に乗せたオーナーとして、感動的に描かれている。本部譜代のオーナーといえようか。
「一号店のオーナーはセブン‐イレブンにとって広告塔のようなもの。多くのオーナーにとって希望の星という位置づけです。だから本部は、このオーナーには様々な便宜を図ってきた」(草創期を知るオーナー)
 そのため、大多数のオーナーがユニオンに反発しているというイメージを広めるために、本部が裏で糸を引いているのではと、穿った見方をする向きも少なくない。
(後略)

 

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