「故人献金は鳩山由起夫の指示だと検察に証言した関係者がいる」。そんな情報が永田町に流れている。鳩山の偽装献金問題は市民団体が元政策担当秘書と公設第一秘書を7月に告発し、東京地検特捜部が捜査中。厚い捜査体制が敷かれており、その人数からどうやら「検察は本気」。関係者の事情聴取が幅広く行われている。
政治献金は所得税から還付される。鳩山側は手続きのための証書を取得していた。もし還付が実行されていれば悪質な脱税行為。特捜部は、偽装に名前を使われた一人一人を綿密につぶす作業を繰り返している。還付金の行きつく先が鳩山の秘書や身内なら、首相の座にとどまるのは難しい。まして鳩山が直接に指示などしていたら、一転犯罪者になる。
「特捜部が関係者の逮捕に踏み切るのは鳩山の支持率が落ちてから」という見方もある。10月26日に召集された臨時国会で、自民党は鳩山を追及する。自民党の調査能力にもよるが、繰り返し疑惑が取り上げられ報道されれば、鳩山の支持率が下がるのは確実だ。
加えて、マスコミは明確に指摘していないが、首相としての鳩山の統率力を疑わせる事態が随所に露出している。郵政・金融担当相の亀井静香は金融モラトリアムをめぐって我意を貫き通す構えで、鳩山の意向を尊重する素振りもない。外相の岡田克也は米国抜きの「東アジア共同体」を明言し、訪米中の鳩山の対米配慮を無視した。国土交通相の前原誠司は、相談もなく羽田のアジアハブ空港構想をぶちあげた。来年度予算案の概算要求は閣僚の主張を抑えられず90兆円を超えた。
閣僚が真の実力者である幹事長・小沢一郎の方向を向いているわけではない。鳩山の政治家としての甘さに付け込んで、己のやりたいようにやっているのだ。
鳩山の弱さが国民に印象付けられれば支持率は下がる。事実、永田町では鳩山の長期政権を予測する向きが目に見えて減ってきた。「来年夏の参院選まで持つだろうか」と問えば、大方が首をかしげる。マスコミがもてはやす表面とは違い、鳩山政権は発足から2カ月をまたずに下降線を辿り始めた。
小沢と自民党参院を抑える青木幹雄がしばしば酒を酌み交わして密談、鳩山が早期にダメになったら、自民党参院議員で国民人気の高い枡添要一を次の首相とすることで一致した――というアングラ情報も流れている。かつての大連立の蒸し返しだが、ひょっとしたら本当かと思う議員がいるのは、鳩山の前途に暗雲が漂っているからにほかならない。
鳩山政権が早期に倒れて困るのは小沢だ。後を折り合いの悪い岡田克也が狙っており、国民人気も高い。菅直人を副総理にしたのは鳩山退陣に備えたものだが、菅を後継首相にするのは簡単ではない。民主党内の反小沢勢力が団結して岡田を押す可能性が濃厚で、そうなれば党内権力闘争は熾烈になる。来年夏の参院選前にそんな事態が国民にさらされると、参院選での圧勝に黄信号が点りかねない。
(後略)