記事(一部抜粋):2009年10月掲載

経 済

東急リバブルが人の土地を無断で販売?

「売買契約書にこだわるのは実務的ではない」

(前略)
 槍玉に上がっているのは、東急系の不動産仲介・販売会社「東急リバブル」(東証一部、東京都渋谷区)。他人が所有する土地に無断で侵入、整地して販売しようとしたとして、土地の持ち主から訴えられたのだ。
 訴状や関係者の話によると、あらましはこうだ。
 原告の川富士建設(滋賀県大津市・川村眞吾郎社長)は2007年11月、東京の不動産担保金融企業ライフエステート(以下ライフ社)から約6000万円を借り入れ、大阪府吹田市青山台の296平米の土地と付属建物を購入した。既存の建物を取り壊して新築物件を建設する計画だった。
 ところがライフ社は、資金調達元としていたリーマンブラザーズの子会社が経営難に陥ったことから資金繰りに窮し、川富士建設に融資の早期返済を求めた。
 そこで川富士側は、返済をなるべく早く進めるために、知己の企業である「ユー・システム」に購入を持ちかけ、08年5月、首尾よく売買契約を締結した。
「手付金も受けとり、進捗具合はライフ社に逐次報告していました」(川村社長)
 ところが08年も年末に近づいて信じられないことが起きたという。
「東急リバブルの社員が川富士建設に無断で土地に入り、庭木を切って整地作業をしていたことが分かったのです。12月13日と14日には「東急リバブル」の幟を立てた販売所まで設けて、勝手に土地を売り出していた。新聞の折込チラシや戸別配布も勝手にやっていたのです」(同)
 第三者が他人の土地を勝手に販売することは、敗戦直後にはあったらしいが、現在の法治社会においては決して許されないことだ。不動産ビジネスは売り手と買い手が売買契約書を交わすことで実行される。ところが川富士と東急リバブルとの間には、売買契約書どころか口頭での商談すら交わされていなかったのである。
「東急リバブルとは現地で初めて会いました。『おいおい、勝手に人の土地を無断で整地して売るとは何事か。所有者に確認しないのか』と問いただすと、『確認する必要はない』と言って販売を続けようとした。警察を呼んで阻止しました」(同)
 なぜ、このようなことが起きたのか。考えられるのは、川富士建設に融資をしたライフ社が、担保物件を川富士側に無断で、東急リバブルに売り渡していたということだ。
 しかし法廷では、東急リバブル同様に被告の立場であるライフ社の担当者は、東急リバブルには不動産の査定さえ依頼していないと証言した。仮に、金融業者が担保物権を売っていたとしても、「売買契約書が所有者から出されなければ動けない」のが不動産ビジネスの基本である。ライフ社の担当者も「売買契約書を交わさずに依頼することなどありえない」と証言している。
 しかし、東急リバブルの担当者は「ライフ社から売買契約書を送ると連絡があったのでチラシをつくって販促をした。早く売ってほしいという気持ちが伝わってきた」などと証言。所有者の同意書なしに庭木を伐採し整地して販促したことについては「売り主のためにした」と開き直る始末。
 それにしても驚かされたのは、東急リバブル側の弁論中に「売買契約書にこだわるのは実務的ではない」との発言があったことだ。さらに、「所有者との売買契約書なしに販売することは、東急リバブルではよくあるのか?」との問いに対し、担当者は「たぶん、そう珍しいことではない」とも証言した。
(後略)

 

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