(前略)
それでなくても新興市場は存亡の危機にある。株価下落や新興企業の破綻ラッシュ、インサイダー取引や粉飾などの相次ぐ不祥事によって長らく低迷が続き、投資家の新興市場離れにも歯止めがかからない。中でも地方の新興市場の惨状は目を覆うばかり。上場企業が10社足らずで赤字に転落した札幌アンビシャス、2007年8月以降、新規上場がない福岡Qボード、08年に新規上場が設立以来初めてゼロとなった名証セントレックスでは、富士バイオメディックス、エスグラントコーポレーション、アプレシオの3社が倒産に至っている。この3市場の売買代金シェアは全新興市場のわずか0.2%にすぎず、上場している企業も、すでにビジネスモデルが崩れ去っているところが目白押し。それどころか「不可解な資金調達や、某広域暴力団が関与している」(外資系ファンド)ケースも垣間見え、アングラの巣窟と化している感もある。これでは存在意義そのものが問われるのも当然である。
今後の焦点は、JASDAQと大証ヘラクレスを統合、10年秋に「新生JASDAQ」として再スタートさせる大阪証券取引所の動き。「東証との競合から、地方の新興市場をまとめ上げて勢力を拡大する可能性もある」(大手証券幹部)ようで、そうなれば再編・淘汰が加速する。ただ、再編で新興市場が復活する保証はどこにもない。
危ない新興ベンチャーの駆け込み寺として知られていた監査法人ウィングパートナーズ(以下ウ社)の受け皿になっている監査法人元和が市場関係者の注目を集めている。ウ社は監査先で重大な虚偽が発覚したため7月に業務停止処分を受け、上場13社の会計監査人を一斉に辞任するという前代未聞の事態を引き起こした。ちなみにこの13社をみると、ランド、インスパイアーなど実に12社が最終赤字。ほかにも、あのニューディール(旧リキッドオーディオジャパン)や迷走の末に倒産したモック、金融商品取引法違反で摘発されたオー・エイチ・ティーなど、いわくつき企業のラストリゾートとなってきた。ウ社の辞任で監査先企業は一気に窮地に追い込まれたが、そこに救いの手を差し延べたのが元和。今年七月の設立直後から、サハダイヤモンド、オープンインターフェイス、クロニクル(旧なが多)といった「ウイング銘柄」を相次いで引き受け、ほかにもロプロ(旧日栄)やヤマノホールディングスなど、まさに危ない銘柄の駆け込み寺になっている。
元和の代表社員である星山和彦氏は、08年に副社長を務めていたルーデン・ホールディングス(ヘラクレス上場、旧アライヴコミュニティ)の「五億円流出事件」で辞任に追い込まれ、同年4月には瀕死の状態にあった新興デベロッパー・総和地所(JASDAQ上場)の役員に就任したものの、こちらもすぐさま退任した経歴の持ち主。星山氏の狙いは何なのか。(後略)