記事(一部抜粋):2009年8月掲載

経 済

政策金融の民営化は凍結

 民主党政権でニンマリの財務省【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)A ところで8月30日の総選挙が、巷間指摘されているように、都議選の二の舞いになる可能性は高いと思う。つまり、国政でも自民党は惨敗を喫する。
B 民主党を中心とする連立与党が衆参両院の主導権を得ることになるだろうね。そうなれば国会運営は安定する。しかし、問題は安定化した国会に、どんな政策や法案を乗せてくるかだ。
C 郵政民営化が凍結されるのは間違いないんじゃないかな。西川善文・日本郵政社長の続投も白紙に戻される。ただし辞めるタイミングはわからない。すぐ辞めるのか、次の任期切れで辞めるのか。もちろん西川氏のほうから辞表を出してくることもあり得る。西川氏は、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式上場を最大の課題と考えていたが、民営化の凍結で上場が消えれば、西川氏が目指してきたものがなくなってしまう。
B どこまで戻されるかが焦点だろう。四分社化の見直し論が根強いだけに、経営形態にメスが入る可能性もある。日本郵政グループも内部混乱が必至だ。
A しかも、民主党は天下りの禁止を主張している。その意味で、旧郵政省官僚の団宏明副社長の立場は微妙だ。辞任に追い込まれる可能性がある。
B そのためなのかどうかはわからないが、最近、団氏は随分と荒れているようだね。日本郵政関係者が「とにかく怒りまくっている」と困り果てていたっけ。
C 一方で高木祥吉副社長は安泰だという見方は多い。財務省OBで金融庁長官を務めた高木氏は、むろん旧郵政官僚ではない。高木氏をはじめとする「財務省・金融庁」組の役員陣がそのまま残るようだと、日本郵政は財務省主導で動くことになるかもしれない。
A そうなると、民営化の流れはストップし、国債購入機関という以前の姿に戻るかもしれない。
C それはそうと、政策金融も元に戻っていくだろう。日本政策投資銀行は、民営化が3年後ろ倒しになることが決定した。その直後、政府保証付きで日本航空に追加融資を実行することも決まった。完全に昔の姿に戻りつつある。
C 民主党は、政策金融民営化、中でも日本政策投資銀行の民営化を凍結するという考え方だ。要するに、公的金融のオモテである日本郵政の民営化を凍結し、ウラである政投銀の民営化もストップするという主張だ。民主党が政権を取れば、2つの凍結策が実行に移されるだろう。
B 民主党は、官僚主導の廃止と、天下りの禁止、特殊法人の撤廃をマニュフェストに掲げてきた。矛盾しないか。
C 現在は金融危機の異常事態で、そのための対応が必要だという説明を民主党はしているが、金融危機、経済危機は簡単に収束しない。今後、何年も続くだろうから、しばらくは「凍結」が続くのだろう。そのうち、危機なのか、危機ではない正常な経済なのかの区別もつかなくなるだろうし(笑)。
A そこが実は大きな問題だね。何をもって危機と言うのか。どういう状況になったら危機対策をやめるのか。基準が何もない。とにかく、大変だ、大変だ、という騒ぎの中で、自民党も民主党も経済対策を「粗製乱造」してしまった。
B ところで、民主党は本当に官僚政治の打破を実現できるのかな。
A もちろん無理に決まっている。いずれ、官僚機構に政策立案を依存するようになるだろう。
B 民主党は、財務省の予算策定部局である主計局を財務省から分離して、官邸機構の中に入れると言っている。これはどうとらえるべきだろう。財務省の解体なのか。
C そんなことはない。だって、主計局が官邸に引っ越しするだけだろう。官邸に移るメンツが主計官僚というだけのこと。官邸で主計官僚主導の予算づくりが行われるというだけの話だ
B つまり、財務省は無傷ですむと?
C 無傷どころか、得をするだろう。官邸に移れば、それだけ政治に接近する。いよいよ、権勢をふるうことができる。もちろん、財務官僚は表向き、「大変なことになった」と悲しそうな顔はするだろうけど、腹の中ではニンマリだ。(後略)

 

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