20年前には九州とほぼ同じくらいだった中国のGDPは、早ければ来年にも、遅くても再来年には日本を抜くものと思われる。「世界第2の経済大国」を、日本は中国に譲り渡すことになる。
ひたひたと日本の後を追ってきた中国だが、気がつけば遙か先を行ってしまい、いまや後ろ姿さえ見えない、という部門も出てきている。通産省が「鉄は国家なり」と言った80年代に世界一だった日本の年間鉄鋼生産量は1億5000万トン。いまの中国が年間6億トンを超えていることをみれば、見る影もない。中国は高速道路の建設も年間1万3000キロメートルのペースを維持しており、かつての道路王国のアメリカを凌ぐ。日本の道路族が将来敷設したいと言っている全ての計画を1年間で消化してしまっている。
90年当時、広州から上海までトラックで9日間もかかっていたときに、「船で輸送した方が早い。中国は大都市が島で、その間は海と思った方がよい!」と物流業者が言っていたが、神話の世界の昔の話のように感じられる。
インターネットのアドレス(URL)を持つ人が3億人を超えダントツ世界一となった。日本ではお年寄りから赤ちゃんまでがネットを始めても1億に届くかどうか、という規模感の違いが鮮明に出てきている。携帯電話も4人に1人が持っており、どこが貧乏なのか、というくらいのブームである。NTTドコモの契約者数がなかなか6000万人に届かないのに、中国移動通信は1億5000万人を超えた。これは単に数の問題ではない。同社の時価総額(20兆円)を見ると、日本のどの企業でも、その気になれば買収できることに気がつく。
つまり規模感と成長性が先行指標としての時価総額を押し上げ、中国企業が世界を経済制覇できるポジションに立っている、という認識を持たなくてはいけない。
現に世界的な金融危機のなかで時価総額が一番大きいのは中国建設銀行であり、トップ10には中国の4行がランキング入りしている。かつて「世界のバンカー」と言われた日本勢や、つい最近まで世界中を我が物顔で歩き回っていた欧米のグローバルバンクは、中国の銀行に簡単にM&Aされる規模になってしまった。
2009年になってからの5カ月間の自動車売り上げもアメリカを抜いて世界一の座を占めている。
「生産基地中国」というイメージは「巨大消費地中国」という実態に合わせて変えていかなければ、日本企業は衰退する国内市場に追い込まれていくだけである。つまり、これからは「中国脅威論」から「中国お客様論」に転換できた会社だけが生き残っていける、ということでもある。
いまの日本政府のやり方を見ていると、全体主義の中国が邁進しているのに対抗して国内経済を活性化することなど到底望めない。選挙対策に国民の税金をバラマくことくらいしか脳がないからである。となれば、中国の成長を取り込んでしたたかに儲けることを考えるしかない。
ようやく日本企業の中にも中国に深く食い込んで成長を続けているところが、大企業だけでなく地方の中小企業にも出てきている。「味千」や「王将」は、中国発と思われるラーメンや餃子を中国で販売して人気を呼んでいる。日本に旅行で訪れる中国人の数も、今後はいまの10倍、すなわち年間1000万人くらいになると思われる。「ようこそJAPAN」と中国をもっと積極的に取り込むことが景気対策としても必要になっている。何しろ、かつての日本人がハワイに行ったときのように1人当たり30万円くらいのお土産を買って帰るのだから。(後略)